はじめに
今年度の税制改正で私たちの生活は何が変わる?
ではここからは、2019年度の税制改正で何が変わるのか、読者のみなさんに関連する主な税制改正の概要をみていきたいと思います。
1「消費税率引き上げ対策」税制
毎年、税制改正にはテーマがあります。今年のテーマは非常にわかりやすいものでした。一言でいうと「消費税率引き上げ対策」です。消費税率が8%から10%に上がると、消費者は8%の時代に買っておこうと消費に走り、10%になった途端に買い物をやめてしまうと、経済に大きな打撃を与えてしまいます。それを防ぐための対策として、税制改正される代表的なものとしては、次のものがあります。
・住宅ローン控除の拡充(減税)
・自動車税の税率引き下げ(減税)
個人の家庭で大きな買い物といえば、“マイホーム”と“車”でしょう。消費税率がアップすることで金額が大きいこれらが売れなくなってしまうと、経済に与える打撃は大きいです。
そこで、消費税率が引き上げられたあとに、借入をしてマイホームを買った人、自動車を買った人には特典を与えてあげましょうというのが、今回の税制改正の目玉になっています。車体課税が減税されるのは初めてのことなので注目されています。詳しい内容については、次回以降の記事で解説しましょう。
2「民法改正」に合わせた税制
約40年ぶりに民法が改正され、「相続法」と呼ばれる相続に関する基本的なルールが変わることが決まっています。税制をそれに合わせる必要があり、改正がされることになりました。内容は次のとおりです。
・配偶者居住権の取扱い(新設)
・特別寄与料の取扱い(新設)
こちらも内容については、次回以降で解説します。その他、民法改正関連として、成人年齢引き下げに伴い、年齢要件がある制度の見直しが図られることになっています。
3 その他の個人への税制
1と2以外で個人に関する課税については、次のものがあります。
・教育資金一括贈与の要件見直し(増税)
・結婚資金贈与の要件見直し(増税)
・未婚のひとり親への個人住民税非課税(減税)
・ふるさと納税制度の見直し(増税でも減税でもない)
教育資金と結婚資金の贈与は、お金をもらう側(子や孫)に所得制限が設けられるなどの改正です。
未婚のひとり親への税制措置については、ニュースでご覧になった方もいると思いますが、土壇場で与党内部で意見が割れ、税制改正大綱の公表が予定より1日遅れることになったテーマです。2019年度の税制改正では、国税ではなく、地方税である個人住民税が非課税になる措置になりましたが、来年度の税制改正で再検討される予定になっています。
ふるさと納税は、前回のシリーズで見てきたとおり、過度な返礼品が問題視されてきました。今回の改正により、「返礼割合3割以下」「返礼品は地場産品」であることを満たす地方自治体だけが、ふるさと納税の対象として総務大臣により指定を受けることができるようになります。つまり、上記2つの基準を満たさない地方自治体は、ふるさと納税の対象外になるということです。返礼割合3割以下はわかりやすい基準ですが、地場産品とは何を指すのか、捉え方が難しい場合もあります。地場産品の定義は現段階では明らかになっていませんので、今後注目していきたいところです。なお、ふるさと納税の改正は、2019年6月1日以後に支払う寄附から適用される予定です。
以上、税制改正そのものについてと、2019年度の個人に関する税制改正で主なものを概観しました。次回以降は、各税制改正の内容について解説をしていきます。