はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回は読者の家計の悩みについて、プロのFPとして活躍する内藤忍(ないとう・しのぶ)氏がお答えします。

現在、主人と私と2歳の子供の3人で賃貸マンションに住んでいます。秋にはもう一人出産予定です。私も主人も会社員で転勤はありません。私は産後も仕事を続ける予定です。

数年後に土地を購入し、二世帯住宅の建築を検討しています。主人の両親(60代前半)と同居予定です。理想は、お互いのプライバシー確保のためにひとつの土地に2戸建築し、将来両親が亡くなった場合に賃貸に出す、または土地を分筆して売却できるようにしたいと考えています。

主人が一人っ子なので、近くに両親がいた方が安心ですし、子供の面倒も見てもらえるので助かると考えた結果なのですが、かなりの費用が必要なのと、一度建ててしまうと万が一うまくいかないとなかなか引越しができなくなるので、まだ決断できないでいます。
最近の社会福祉や経済情勢からみると、二世帯住宅には賛成でしょうか。また、二世帯住宅を建築する場合にお得になる税法などがあれば教えてください。
(30代前半 既婚・子供1人 女性)


内藤: 最近は両親と同居したり、近くに住んだりするケースが増えてきているようです。震災以降、家族が近くにいた方が安心という精神的な面や、経済環境が厳しくなって、親元に近い方が経済的にもメリットがあるというのがその背景にあると思います。

私は二世帯住宅に住んだ経験がありませんが、二世帯住宅に関しては慎重に考えた方がよいと思います。

両親と同じ敷地に住んで、生活の共通部分が増えてくると、たまに両親の家に遊びに行くときとは違った、トラブルが発生する可能性も出てきます。

子供の面倒を見てもらえるのは確かに便利で安心ですが、それも度が過ぎれば、親も協力的になれないケースも出てきます。

プライバシー確保のために建物の入り口を別にしたとしても、実質的には毎日顔を合わせるようになりますから、生活レベルでのさまざまな行き違いなども発生します。

二世帯生活、判断は慎重に

また将来相続した場合に賃貸に回したり、売却したりするということになると、賃貸に向いた設計にしておく必要もありますし、売却しやすい構造に工夫しなければなりません。しかし、そのような間取りになってしまうと、今度は生活するのに不便が生じたりします。

二世帯にすることによって発生する不都合とメリットを天秤にかけて最終判断することになりますが、一度建ててしまった家は簡単には建て直せません。慎重に判断することが大切だと思います。

例えば、しばらくは二世帯住宅の賃貸物件を借りて、実際に生活を2年くらいしてみる。その上で納得できれば、具体的に二世帯マイホームを検討するというのはどうでしょうか。実際に生活しなければわからないリアルな問題を知ることができると思います。

両親の介護や、子育てといった特別な事情があれば、近くに住むメリットの方が大きくなりますが、そうでなければ、少し離れていていつでもお互いに駆けつけられるような距離感を保った方が良好な関係を継続できる。多くの事例を見て、私が感じることです。

今回のご質問に正解はありません。ご自身のケースでしっかりと現実を考えてみることがなにより大切です。

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