はじめに

家計の三分法を活用して、支出に優先順位をつける

今回お聞きした家計表を見ると、赤字の状況です。毎月7万円の赤字は大きいですね。定年退職までにもう少しお金を貯めるのなら、貯蓄額も毎月出せるようにならなくてはいけません。

食費などは節約しているように見えますが、ほかの費目でお金を使いすぎていれば貯まるはずはありません。何が必要な支出で、何が必要ではない支出かを見極められるようになりましょう。そのためには、先ほどの家計の三分法が有効です。

例えば今一番支出が大きな交際費。外食費やプレゼント、月2回の帰省費とありますが、すべて毎月必要なものでしょうか。この中の支出を3つの意味で分けてみましょう。友人との外食は、会うことで元気が出る、仕事につながる等なら「投資」でしょうし、惰性でなんとなくというなら「浪費」、互いの健康状態の確認などなら「消費」という考え方ができるかもしれません。帰省も、母親の健康確認や世話の意味なら「消費」でしょうし、ただ単に会いたくて行くなら「浪費」かもしれません。このようにひとつずつ考えてみるとよいと思います。

そうすると、「母親に親孝行することが一番大事」「仕事につながるような人と会うことを優先したい」など、お金を支払う上で大切にしたいポイントが見えてくると思います。そして、大切な部分にお金を使えるようにしたら、それ以外の支出はできるだけ少なくしていく。これが無理のない支出の下げ方です。それができてくると、徐々に貯蓄に回せるようになってくると思います。

母親と自分の介護も視野に入れた準備を

ご相談者さんはいったいいくら老後資金があるとよいでしょうか。働く単身の方の一般的な年金受給額の平均は約14万円といわれています。お母様との生活になると、支出がいくら必要になるのかが老後資金を決める手立てになってきます。

家賃と帰省費がかからなくなるので、今より15万円ほどは支出が減る可能性があります。ですが、どちらかが介護が必要になったり、病気になったりしたら、支出が増える可能性もあります。現状の支出から言うと、支出は20万円まで減るかもしれませんが、それ以上に増える可能性もあるということです。

例えば、年金受給額14万円から必要と思われる生活費20万円を引くと、6万円の赤字です。これを平均寿命近くの90歳まで補填すると考えると、生活費だけで1800万円が必要といえます。長生きすると、もっと必要です。そこに、医療介護費として別に500~1000万円みたほうがよいでしょう。お母様の介護費の負担もあるかもしれません。加えて住居のリフォームが必要になる可能性もあります。

いろいろ可能性で考えるとキリがないですよね。老後はお金をかけずに暮らせばよいとか、老後資金は最低限で十分だとか言われる一方で5000万円、1億円必要だといわれたり、何が本当かわからないように感じてしまいますが、実際のところはその方個人によって異なります。今回は退職金の金額は聞いておりませんが、貯められるのであれば、少しでも多く貯めることを意識して、退職までがんばってほしいと思います。

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