はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、マイホームの購入を決めた35歳男性。とりあえず35年で住宅ローンを組んで繰り上げ返済すれば大丈夫だと不動産屋に言われましたが、定年後の70歳まで支払いが続くと思うと不安だといいます。相談者の悩みにFPの平野泰嗣氏がお答えします。

現在、家族4人で賃貸マンションに住んでいます。子どもが大きくなり、家の中で走り回ったりするので、周りに迷惑をかけていないか心配です。ちょうど良いタイミングで近所に新築分譲マンションが売り出されたので、保育園を変える必要もないし、長男が小学校に入る前にマイホームが欲しいと思っていたため、購入を決めました。資金計画を立て、住宅ローンの審査に出すところなのですが、住宅ローンをどのように組んだら良いか悩んでいます。不動産屋さんは「とりあえず35年でローンを組んで、繰上げ返済や退職金で完済すれば大丈夫ですよ」と言いますが、完済時の年齢が70歳になるので心配です。勤めている会社は、65歳定年制が導入されましたが、60歳以降、収入は減ります。退職金は、65歳時に2,000万円程度になる見込みです。


<相談者プロフィール>
・男性、35歳、既婚(妻:33歳・パート)、子ども2人(5歳、3歳)
・職業:会社員
・居住形態:賃貸マンション(マンションを購入予定)
・手取り世帯月収:43万円
 夫:35万円
 妻:8万円
・手取り年間ボーナス:約150万円
・貯金:800万円(自己資金支出後は300万円)


<購入資金計画>
・購入価格(諸経費込):5,000万円
・自己資金:500万円(予定)
・住宅ローン:4,500万円(借入条件は検討中)
・購入物件の管理費・修繕積立金:毎月2.5万円(年間30万円)
・固定資産税:年間12万円


【家計の状況】
・毎月の支出:32万円(うち、家賃12万円)
・毎月の貯金:11万円(児童手当は含まない)


平野: マイホームの購入で、物件選びに次いで悩ましいのは住宅ローンの組み方、その中でも特に返済期間です。返済期間を短くすれば、月々の返済負担は重くなり、返済期間を長くすれば、相談者様のように完済時期が定年を過ぎてしまいます。今回は、住宅ローンの返済期間の考え方について解説します。

返済期間が家計に与える影響を試算する

相談者様の不安は、定年後65歳を過ぎても住宅ローンの返済を続けていけるかどうかです。そこで、60歳までの25年間で住宅ローンを組んだ場合と、70歳までの35年間で住宅ローンを組んだ場合を比較してみましょう。ローン金利は、比較しやすいように固定金利とし、25年は1.35%、35年は1.50%で元利均等返済とします。

25年の住宅ローン: 毎月の返済額 176,817円
35年の住宅ローン: 毎月の返済額 137,782円

25年ローンの場合、毎月の返済額は17.7万円(年間212万円)で、現在の家賃より5.7万円多くなります。このマンションを購入した場合は、住宅ローンの返済のほかに、管理費・修繕積立金が毎月2.5万円、固定資産税は1ヵ月当たり1万円が別途かかるとのことなので、その分を加味すると、現在の家賃よりも月当たり9.2万円の支出増加になります。

現在の毎月の貯金額は11万円なので、なんとか返済可能ですが、子どもの成長にともなう生活費の増加や、これからの教育資金の準備のことを考えると、25年ローンだと心もとなく感じます。家計を見直して、支出を減らすという方法もあるかもしれませんが、家賃を除いた生活費は4人家族で20万円なので、それほど支出が多いというわけではなさそうです。

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