はじめに
消費増税をしても一般税収が増えるとは限らない
――マンガ内では消費増税のような「国民の痛みを伴う改革」に反対されていますね。
理由は『キミカネ』にも描いていますが、今のデフレ下の日本で消費増税のような施策をすると、高確率で失敗すると考えています。「1千兆円借金があるから、一般税収を上げるために消費税は絶対に上げなければいけない」というのはやめてほしいですね。
1千兆円の借金という一面しか注目されていませんが、マンガでも書いたように、実際には日本政府や日銀はたっぷりお金を持っている。そういった資産には目を向けない政策はやめろ!と言いたい。
実際に、過去の消費増税時の資料を見てみると、増税した年の税収は上がるけれども、その翌年以降はだいたい下がってしまうんですね。
今まで消費税導入後のデータが2回出ているけれども、3%から5%に増税したときは導入の翌年、5%から8%に増税したときは導入の翌々年に、前年の一般税収を下回っています。消費税導入したからと言って、税収が上がるとは限らないわけです。
いわゆるバブル期には一般税収が支出を上回っていたけれども、今は当時みたいに税収が支出を上回って賄えるようにはならない。なぜなら消費税を導入すれば、消費が減るから。回っていない経済がもっと回らなくなって、結果として経済が縮小したうえに、税収も上がらなかったということになりかねない。
このマンガを読んで、経済が上向いていないのに消費税を上げると全員が苦しむんだなぁ、ということを感覚でわかってほしい。
――公共事業はムダ遣いだからダメだとずっと思っていましたが、『キミカネ』を読んで、「もっとやってほしい」と思うようになりました。
今、社会を豊かにするために一番重要なのは、国が金を使うことなんです。
日本では公共事業は浪費であり、悪いことだという認識が強いですが、僕はこのマンガでぼんやりと意識が変わって「もっと使ってもいいんじゃない?」となればいいと思っています。そうなれば、世の中が変わる。
ただ、いついかなる時も消費税は悪だということはできません。経済は本当に状況で変わる。結論がないので、経済を語るときに啓蒙書みたいなのはかけない。状況が変わると結果が180度変わるようなことが多すぎるんです。
だから、今僕は消費増税に反対していますが、金科玉条みたくどんなときでも「消費税は悪だ」と思い込むと足元をすくわれてしまうと思います。
鉄則をもつのではなく、原則をなんとなく知っている方が経済についてはいいんです。“なんとなくぼんやり”でないと、経済については大切なことをかえって見誤る。
経済というのは、マンガの悪役のような黒幕がいて、世界を悪いほうに曲げているわけではない。みんなが「よくなるといいな」と思っているのに、全体的には悪い方に進むということが、まあ起こってしまうんです。経済に悪役はいないんです。