はじめに

お金は持っているだけでは役に立たない

――悪役といえば、今の日本では生活保護受給者や病人、老人のように働けない人に対して「生産性が低い」と悪者のように責める言説をよく見かけます。

図6

現代のデフレ日本では、「消費することが悪い」という風潮がありますね。

単純に言うと、デフレ社会というのはお金の価値が上がって、モノの価値がどんどん下がる世界。だから、お金を持っていれば持っているほど強くなると思って、お金を減らす奴は悪だと認識してしまうんです。お金を増やさずに消費しているだけの人間は悪だという論理ですね。

けれども、本当は誰かが消費しないとお金は増えない。なので、消費している人に対しては、お金を使ってくれてありがとう、と感謝すべきなんです。お金を使っているだけで、全員が経済に参加している。だから、お金を使う人を減らすと何が起こるかというと、経済が縮小してしまいます。

いわゆる病人や生活保護受給者は、本当はGDPをあげてくれるありがたい存在。元気になるまではちゃんと療養してもらいたいし、彼らがちゃんと生活できることを経済的に保証するべき。彼らを切り捨てるくらいなら、金持ちの脱税を捕まえた方がずっといい。

マンガにも描いたように、お金自体は何の役にも立たないんです。お金は使った瞬間に豊かさを生みだすので、持ってるだけでは役に立たない。食べられないし、着れないし、家として住むこともできない。使わないと価値がない。だから、使ってもらわなければ! 稼ぐだけがお金じゃないんです。

――不況が続いたために、自分の数少ない取り分を盗まれると思っているから、社会保障受給者などを叩いてしまうのでは、と感じることがあります。

いわゆる「地位財」というやつですね。人間は儲けの機会を逃すより、自分のお金が減る方がイヤなんです。そして、自分よりも格下だと思っている人間が幸せになるより不幸だと感じることはない。一番の幸福は、他人よりも自分がいいところにいると思う瞬間。それが地位財という考え方で、しかも事実なんです。

日本は、まさに地位財の罠にはまっているんです。数少ない幸福を掴むために他人を陥れ、今いる場所に必死でしがみついているという状態になっています。

今、第二巻の原稿を書いているのですが、テーマはお金と幸せで地位財についても取り上げる予定です。

■前編 国の借金は本当に「悪」!?経済のキモがわかるエッセイマンガ
(後篇は近日公開予定)

井上純一さん
井上純一
1970年、宮崎県生まれ。TRPGデザイナー、イラストレーター、漫画家。玩具会社「銀十字社」代表取締役社長。著作に中国人妻との結婚生活をつづったコミックエッセイ『中国嫁日記』など。

『キミのお金はどこに消えるのか』
少子高齢化、増税、終身雇用崩壊、弱者切り捨て…世の中不安なことばかり。ホントにこの国大丈夫か?それより自分の将来大丈夫か?と不安なあなた。日本は「当面」大丈夫!お金が回ればもっと大丈夫!笑いながら経済のキモがわかる、本邦初のエッセイコミック。

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