はじめに
車の保有時にかかる税負担は軽減される?
今回の税制改正では、今年10月からの消費税率引き上げ後に種々の減税措置が設けられています。というのも、消費税率の引き上げに伴い「消費税が8%のうちに買っておこう!」という駆け込み需要と、その反動によって内需が大きく落ち込むことが懸念されているからです。
なかでも住宅と車は大きな買い物のため、消費税率の引き上げがもたらす影響も大きくなります。住宅に関しては前回の記事で解説していますので、今回は自動車の税制改正について解説します。
そもそも、自動車には取得時、保有時、車検時、走行時の4つのタイミング別に、さまざまな税金がかけられています。
・取得時: 自動車取得税(地方税)、消費税(国税、地方税)
・保有時: 【普通車】自動車税(地方税)
【軽自動車】軽自動車税(地方税)
・車検時: 自動車重量税(国税)
・走行時: 【ガソリン車の場合】揮発油税及び地方揮発油税(国税)
そして、環境性能(排ガス性能や燃費性能)に優れた自動車の普及を促す観点から、一定の環境性能を満たした自動車については、自動車取得税や車検時の自動車重量税を減免する特例(エコカー減税)が設けられているのです。
自動運転、カーシェアリング、電気自動車など、自動車を取り巻く環境は変革期を迎えています。「保有から利用」への変化に対応すべく、2019年度の税制改正では、自動車の保有にかかる税負担の軽減が図られる一方で、環境に配慮するという観点からエコカー以外の税負担が増加することになります。
制度創設以来初!自動車税、最大4500円引き下げ
自動車に関連する税制について、主な改正内容は次のとおりです。
1.保有時にかかる自動車税の税率引下げ(恒久減税)
新車新規登録を受けた自家用自動車から、小型の自動車を中心に、毎年支払う自動車税の税率が次のとおり引き下げられます。
軽自動車については、現状の1万800円から変更はありません。適用は、消費税率が引き上げとなる2019年10月1日以後に登録を受けた自動車からです。自動車税は、1950年の制度創設以来、一度も税率が引き下げられたことがありませんでしたので、画期的な改正といえます。
2.自動車取得税の廃止と「環境性能割」の時限的措置
車を取得する際にかけられていた自動車取得税(原則、価格×3%、軽自動車の場合は価格×2%)ですが、かねてから消費税とダブルで課税されると批判があったこともあり、消費税率引き上げのタイミングで廃止になることが決まっていました。代わりに、価格に対して省エネ法の燃費基準値の達成度に応じて0~3%の間で課税される「環境性能割」が導入されることも前々より決定していました。
2019年度の税制改正では、この環境性能割について、消費税率引き上げから1年間に限って、減税(税率1%の引上げを抑制する)措置が設けられました。なお、電気自動車等について環境性能割は非課税です。
3.エコカー減税(自動車取得税・自動車重量税)の軽減割合等の見直し
燃費基準の達成率が低く、環境性能が良くないとされる自動車について、自動車取得税、自動車重量税はエコカー減税の軽減割合が減少する、つまり、減税幅が小さくなります。
4.グリーン化特例の対象車縮小
グリーン化特例とは、排出ガス性能及び燃費性能に優れているなど、環境負荷の小さい自動車に対して、それらの性能に応じて、自動車税・軽自動車税を軽減する措置です。これまでは、ガソリン車やハイブリッド車でも軽減措置を受けることができましたが、平成31年度税制改正により、特例の適用対象が電気自動車などに限定されることになります。2021年4月1日以後に新車登録を受けたものに適用されます。
自動車に関する税については、今後も抜本的な改革が予定されています。現在は、自動車に対する課税の仕方について過渡期にあります。しかし、保有時課税から利用時課税へシフトする流れは継続するとみてよいでしょう。
消費税率引き上げを気にするよりも、環境に配慮した自動車の購入検討の方が長期的にみると基本的には税負担が軽くなるでしょう。マイカーという大きなお買い物。環境に配慮して、税金も安くなる、一石二鳥をねらってみてはいかがでしょうか。