はじめに

「銀座」は、明治時代から高級商店街として発展してきた歴史ある商業集積地です。近年は同時多発的な大規模再開発や施設活性化を背景として、今や「グレーター銀座」とも呼ぶべき広域かつ魅力的な商業集積地が誕生したと言えます。今後も、国内外の商業集積地との立地間競合において、強い競争優位性を発揮していくと期待されます。


銀座の広域化=「グレーター銀座」の誕生

「銀座」は、明治時代から西洋風のレンガ街がいち早くできた西洋文化発祥の地でもあり、新しいものを真っ先に取り入れてきた高級商店街です。ハイエンド・ハイセンスのショッピングエリアとしての歴史を背景として、世界3大ショッピング・ストリートの1つとも言われています。すなわち、銀座、シャンゼリゼ通り(フランス・パリ)、オーチャードロード(シンガポール)です。

近年は同時多発的かつ銀座・有楽町・日比谷の結節点に相当する立地での大規模再開発が相次いでおり、銀座地区全体の魅力向上のみならず、銀座~有楽町~日比谷にわたって“点→線→面”へと回遊ルートが拡大しています。

銀座エリア最大級の商業施設「GINZA SIX」(2017年4月開業)が代表例ですが、「東急プラザ銀座」(2016年3月開業)は、人通りの多い晴海通りと外堀通り、みゆき通りと数寄屋通りと言う銀座の主要な通りに囲まれた数寄屋橋交差点の一角に位置しています。日比谷には2018年3月に「東京ミッドタウン日比谷」が開業しました。

また、銀座と日比谷をつなぐ有楽町でも、代表的なランドマーク「有楽町マリオン」がリニューアルを進めており、日本初のツインドーム施設(=複数の上映ドームを有する施設)を有する「プラネタリアTOKYO」が開業し(2018年12月)、阪急百貨店「阪急メンズ東京」も今春に開業以来の最大規模となる大改装を予定しています。

こうした魅力的で集客力の強い大型商業施設の複数開業を背景として、“銀座の広域化”=「グレーター銀座」とも呼ぶべき広域商業集積地が誕生したと言っても過言ではなく、今後、国内外の商業集積地との立地間競合において、強い競争優位性を発揮していくと期待されます。

数字に現れる「グレーター銀座」の効果

では、前述の新しい大型商業施設オープンや改装投資によって、銀座は活性化しているのでしょうか。ここで「松屋銀座」の売上高(前年同月比)を見ると、近隣で商業施設が相次ぎ大規模改装・新規開業した2017年春より前年同月比プラスに転じている形となっています(下図)。

うち国内顧客向け売上高(除く免税売上高)は2017年2月期:前期比1%減から2018年2月期:同2%増から2019年2月期上期(3~8月):前年同期比2%増となっています。

また、東京都内における2019年2月期上期(3~8月)の地区別商況を見ると、銀座:前年同期比8.1%増、新宿:同4.5%増、渋谷:同1.2%増、池袋:同1.9%減となっており、東京地区の他の地区と比べて、銀座地区が活況となっていることがうかがえます(下図)。

「グレーター銀座」と消費関連企業

「グレーター銀座」の活況は当該エリアに出店している様々な消費関連企業に恩恵をもたらすと期待されます。小売企業では、銀座の代表的な百貨店の松屋(8237、東1)、訪日外国人旅行客にも知名度が高いマツモトキヨシホールディングス(3088、東1)、外食企業では、インバウンド需要が期待できるハブ(3030、東1)、銀座界隈で複数の業態を31店舗展開しているDDホールディングス(3073、東1)、ブランド・ファッション関連では、オリジナルブランドのバッグを販売するスタジオアタオ(3550、東マ)があげられます。

リユース関連でもSOU(9270、東マ)が銀座地区にインバウンド客や富裕層向けのショップを有しています。また、贈答用高級菓子を扱う寿スピリッツ(2222、東1)は松屋銀座へ出店しており、中期的に知名度向上による業容拡大の機会があるかもしれません。

<文:企業調査部 柳平孝>

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