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報道された東証の再編案は何が問題なのか

国内新興市場の歴史と問題点を解説

現在の新興市場が直面する問題とは

現在の新興市場の問題は、そもそも東証JASDAQと東証マザーズの違いがわかり難い点にあります。さらに、JASDAQの成り立ち経緯から、新興企業とは言い難い企業がJASDAQスタンダードに残っているということです。

このような問題を解決するには、売買代金が低調で、成長性にも乏しく、かつIRにも積極的ではない「根雪」のような「新興」企業を峻別することが肝要でしょう。売買が活発化しない企業に対し、上場維持コストを引き上げ、「それでも上場し続けるメリットがあるか」を問いかけるやり方もあります。

一方、3月16日付の日本経済新聞は、東京証券取引所による市場再編の観測記事を掲載しています。その内容は、まず東証1部の上場を維持できる時価総額の基準を現行の20億円から250億円へ引き上げるとしています。そして、新興企業と中堅向けは、現行の3市場(東証マザーズ、東証JASDAQ、東証2部)から、「新興」と「スタンダード」の2市場に集約するとしています。

これまで記してきたような背景から、再編自体は基本的に好ましいことと考えます。しかし、細部にかかわる異論は様々ありましょう。例えば「東証1部の時価総額基準が何故250億円なのか」などです。

また、東京証券取引所は東証マザーズ上場企業に対し、積極的に本則への移行を促してきた経緯があり、その結果、東証マザーズから東証2部へ移った企業もあります。そうした企業が振り出しに戻るような結果となってもいいのか?という点も議論を呼びそうです。

市場再編時に想定される混乱とは

繰り返しますが、再編は基本的に好ましいことですし、たとえ一部の企業に不利となる結果になったとしても、線引きは必要だと考えます。ではここで、仮に報道通りの内容となった場合の影響について考察してみましょう。

まず第一に、東証1部上場で時価総額250億円に満たない企業への売り圧力が考えられます。同紙面にも記述されていますが、日本銀行や公的年金は東証1部企業全体に投資する「パッシブ投資」を採用しています。ですから東証1部から外れれば、資金が流入し難くなるとの観測から、売りがかさむという懸念です。

企業の新規上場(IPO)の数の一時的な減少についても気掛かりです。仮に市場のあり方が変わるのであれば、変ってからIPOした方が得策ではないでしょうか?例えば、再編前に東証2部へ直接IPOした企業は、ほどなくして「新興」か「スタンダード」に振り返られてしまいます。それならば、市場が再編されてからのIPOを選択する企業が多くなりそうです。

また既に、新興市場へ上場している企業についても、どの市場に振り分けられるのかというリスクが出てきます。

同記事には「制度の詳細については、4月以降の金融審で継続する見通し」、「時価総額の基準の変更など流動的な面も残る」と、報じています。報道機関は市場性が高い話題を報じる義務がありますので、確定していない段階でも市場再編について記事を載せる必要があるでしょう。

しかしながら、市場の安定を考えるならば、すべてが確定してから一気に内容があまねく知らされるほうが、混乱を生じ難いのではないでしょうか。

市場再編に伴う、一過性の混乱は致し方のないことかもしれません。しかしながら、本則である東証2部市場、それぞれの新興市場の特徴を整理した上で、市場間を超えた横串で、改めて、成長性が担保された企業群のINDEXが見たいと思います。さぞかし、魅力的なINDEXになるのではないでしょうか?

<文:投資情報部 宇田川克己>

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