はじめに
年間平均給与を基準にして保険料を見直す方法が拡大
この4月、5月、6月や、昇給後の3ヵ月間に限って,毎年残業が多いという職種・業種があります。
業務の性質上、このような定期昇給の時に残業が多いなど例年発生することが見込まれる場合には、これまでも特例がありました。
3ヵ月平均の標準報酬月額と年間平均額とで2等級以上の差があるときは、年間平均額を標準報酬月額とすることができる特例です。ただし、従来は、定期昇給の時期により、年間平均の特例が使えるケースと使えないケースがあり不公平でした。それが2018年10月から見直され、定期昇給の時期がいつかにかかわらず、特例を使えるようになりました。
「4月、5月、6月の3ヵ月平均や、固定給与が上がった(下がった)ときの3ヵ月間の平均」が、「年間平均額」よりも2等級大きい(小さい)場合に特例があり、年間平均額を標準報酬月額として保険料を計算しなおすことができると、ここでは押さえておいてください。
実は、昇給後の3ヵ月平均が2等級変動しても、改定されないケースもあり、社会保険に関する規定は難しい部分があります。手続きは会社を経由して年金事務所に申請しますので、特例を受けられるかどうかや詳細な要件・計算方法は会社の担当部署に確認しましょう。
3月、4月、5月に残業すると損?
健康保険料は、病気やケガをしなければ、見返りのない掛け捨て保険ですし、増えた厚生年金保険料を将来、受取る年金で回収するには数十年かかるという試算もあります。現に毎月の手取りが減ってしまうというのは、今年10月から消費税も10%にアップする中で、家計への影響も少なくありません。
では、3月、4月、5月に残業して保険料がアップすることは、損ばかりでしょうか?
妊娠・出産で会社を休む時に受け取れる出産手当金、病気やケガで会社を休む時に受け取れる傷病手当金、一家の大黒柱を失った後の遺族厚生年金などは、標準報酬月額をもとに計算されます。
また、将来受け取る年金も65歳から「終身」受け取れるものです。保険料が増えたことで増える年金額はわずかかもしれませんが、高齢になってからのその金額の価値は、働く現役世代が考えているより大きなものかもしれません。
所得税や住民税は、健康保険料や厚生年金保険料を差し引いた後の所得に対して課税されます。つまり、健康保険料や厚生年金保険料が大きくなれば、税金をかける対象の所得が小さくなり、所得税と住民税の負担が少なくなるのです。
所得税や住民税は、支払う私たちに眼に見える具体的な見返りはありませんが、健康保険料や厚生年金保険料はいずれ、一人一人に直接返ってくる保険といえます。
そして、残業は会社の都合かもしれませんが、会社側は残業代を支払ったうえで、残業代に対する社会保険料の負担をしています。それは将来の私たちの年金等が増えることにもつながっているを忘れてはならないことと思います。