はじめに
24時間営業は絶対?
こうした状態に追い打ちをかけたのが、24時間営業見直しの問題です。大阪府東大阪市の経営者が人手不足を理由に、営業時間の短縮をセブン-イレブン・ジャパン本部に申し出たところ、高額の違約金を求められたと訴えました。この訴えに賛同する経営者らが声を上げ、営業時間の短縮について同本部に団体交渉を求めましたが、拒絶されたということです。
この問題には経済産業省も調査に乗り出しました。同省が昨年12月~今年3月、セブンイレブンなど日本フランチャイズチェーン協会に加盟するコンビニ8社の加盟店オーナー約3万人に行ったアンケート(約1万1,000人が回答)では、「従業員が不足している」と答えたオーナーは61%に上りました。前回2014年度の調査では同様の答えは22%だったので、人手不足が非常に深刻な問題になっていることが明らかになりました。
4月には、セブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長が退任。世論の反応も「必ずしも24時間営業は必要ないのではないか」などと、セブン側には厳しい意見が多くみられます。
これを受け、本部は直営店などで営業時間を短縮する実験を始めましたが、両者の対立は解決していません。井阪社長は決算説明会で、「(24時間営業を行うかどうかを)一律に考える時代ではなくなっている。加盟店の経営状況をみながら柔軟に対応する」と述べ、加盟店への人材サポートなども充実させていくことを表明しました。
さらに、これまでの拡大路線をいったん止め、新規出店の基準を厳格化するなど、事業の改革に着手することを何度も強調しました。新規出店を減らし、既存店舗のレイアウト変更を進めて利益率を上げたり、デジタル化やセルフレジ、発注の自動化などによる店舗業務の省力化を行ったりするということです。
7payで省力化できるか
この利益率アップと省力化のカギとなりうるのが7payです。
バーコードをかざすだけで決済ができれば、レジ業務の負担が大幅に減ります。また、細やかな顧客情報を集め、好みや生活スタイルにあったキャンペーンやクーポンの送付を行うことで、頻繁に店舗に足を運んでもらうことができます。誰がいつ、どんな商品を買ったかを分析すれば、発注の自動化も推進できるでしょう。
セブン-イレブン・ジャパンの調査では、電子マネー・nanacoから同社のアプリ「7iD」に移行した顧客は、購買額が月平均で約1,500円アップし、購買回数も8.4回から11.6回に増えました。さらに、クーポンやお勧め商品の配信が効果を発揮し、アプリを使い続ける人は9割を超えたということです。
決算説明会で、井阪社長は「意志ある踊り場を作りたい」と何度も繰り返しました。いったんは成長を止めても、力を蓄えて再び大きく踏み出したいという意味でしょう。
24時間営業と、かゆいところに手が届く品ぞろえで、私たちの生活を格段に便利にしてくれたコンビニエンスストア。生活のインフラになったものの、経営の過渡期にあるコンビニで、7payは現状を打開する一手となるのかもしれません。