はじめに

昨年10月の世界株安にもリンク

IMFによるWEOには、これまでに下方修正されたタイミングと前後して、株式相場のトレンドが変わった経緯があります。

昨年の日経平均の推移をみると、4月頃から続いたモミ合い局面を9月に上放れ。一気に2万4,000円台まで買い進まれ、10月2日の取引時間中には年初来高値の2万4,448円を付けました。

米国のニューヨークダウ平均も、ほぼ同時期に2万7,000ドル直前の水準まで上昇していました。ところが、その後は軟化。「世界同時株安」に見舞われました。

IMFによるWEOの見直しは同月9日。世界経済予測の下方修正は2年ぶりでした。

そもそもIMFとはどんな組織?

IMFは通貨と為替の安定を目的として第2次世界大戦が終わりを迎えた1945年に立ち上げられた国際組織です。前年に米ニューハンプシャー州ブレトンウッズで開催された連合国の会議で、設立が提案されました。

加盟している189ヵ国(2018年9月時点)からの出資金を元手に、経済・金融危機に直面した加盟国に対する緊急の金融支援なども実施。2010年には、財政赤字の“粉飾”が端緒となって危機に陥り、のちの「ユーロショック」を招いた元凶とされるギリシャに支援を行ったこともあります。

現在、トップの「専務理事」を務めるのは、もともとフランスの政治家であるクリスティーヌ・ラガルド氏です。2011年に就任。IMFでは初の女性トップです。同国のニコラ・サルコジ元大統領時代には財務相を務め、一時は首相候補としても取りざたされました。

政治家になる前は弁護士としてキャリアを積み重ねたラガルド氏。IMFのトップの座に就いた際には流ちょうな英語なども高く評価されたといわれます。米雑誌「フォーブス」が2018年に発表した「世界で最もパワフルな女性」のランキングでは、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、英国のテリーザ・メイ首相に次いで3位に名を連ねました。

「天候は徐々に不安定になっている」

ラガルド専務理事は今回のWEO公表の前週2日に米国商工会議所で講演。「世界の70%の地域で景気が減速している」との認識を示していました。

「1年前、私は太陽が輝いていると言った。半年前には地平線にかかる雲を指さした。今日、天候は徐々に不安定になっている」――。ラガルド氏は世界景気の変化をこう表現しています。

一方で、IMFは2020年の世界経済の成長率について3.6%と、持ち直すシナリオを想定。「短期的に景気後退に陥るとは予測していない」などとラガルド専務理事は述べています。

それでも、ブレグジットをはじめとして下振れのリスク要因も少なくありません。国内外の株式相場は当面、こうした状況をにらみながら神経質な展開が続く可能性もありそうです。

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