はじめに

どんなムチャ振りに対応してきたのか

ラグジュアリーカードがアスパイヤーのオペレーターに求めているのは「never say NO(絶対にノーとは言わない)」。これまでも、さまざまなムチャ振りに対応してきたといいます。

たとえば、ニューヨークのタイムズスクエアでプロポーズをしたいというリクエストがあった時は、広告の媒体主と交渉。プロポーズのタイミングに合わせて、巨大スクリーンに「結婚してください」という文字を映し出し、見事にプロポーズを成功へと導いたそうです。

ほかにも、海外のホテルに宿泊した際、ビールを注文したいが、現地の言葉が話せないというカード会員の要望に対して、コンシェルジュが宿泊先のホテルのフロントに電話をし、代わりに注文したこともあるといいます。

断るケースは、医師の手配と、法律に反することくらい。相談した内容が実現できない時は、これならできるという代替案を提案してくれます。その場合、メールで3つほど候補を送り、オススメする理由も説明してくれるそうです。

「コンシェルジュサービスが気に入っているので、娘の代までお願いしたい」と話す会員もいるとのこと。ラグジュアリーカードの岩瀬太郎・経営業務本部長は「言われたことだけをやるのはコンシェルジュではない。リクエストの裏にどんな気持ちがあるのか、探るようお願いしています」と話します。

高品質サービスを支えるアナログなメンテ

それにしても、なぜラグジュアリーカードは、ここまでコンシェルジュサービスに力を入れるのでしょうか。

実は、岩瀬本部長を含む同社の社員5人は、いずれも国内外のカード会社出身。前職の現場で、さまざまな知見と反省を得てきたといいます。そのうえで、前職では実現できなかったことをラグジュアリーカードで実現していこうと、各担当者が企画の交渉から実現まで一貫して受け持っているのだそうです。

岩瀬
コンシェルジュサービスを統括する岩瀬本部長

「他のクレジットカードにない体験ができるカードであり続けたい」と語る岩瀬本部長。1日が24時間しかない中で、自分でなくてもできることはコンシェルジュに任せて、ユーザーには年会費で時間を買ってもらうことを念頭に置いているといいます。

そのために重要になるのが、コンシェルジュと商品企画担当者の“距離の近さ”。「お客様との接点にこそ、サービス開発に生かせる大切な声が入っている」と岩瀬本部長。この両者の距離感が近いからこそ、コンシェルジュが会員から言われた内容について、都度検討し、スピード感をもってサービスを改善し続けることができているというわけです。

こうした事情があるからこそ、コンシェルジュのメンテナンスにも気を配ります。ある時は岩瀬本部長自ら、有名菓子店のガトーショコラをコンシェルジュの人数分、持参し、それぞれの相談に乗り、不安の払拭に努めています。

「決まったマニュアルがあるわけではありません。お客様は千差万別。会員数の増加に伴い、リクエストの数も増えていく。そうなると、コンシェルジュも人間なのでミスが出る。それをいかに少なくするか。日々努力を続けていきます」(岩瀬本部長)

一見すると、派手なカードフェイスや、豪華なサービス内容にばかり目が行きがちな超高級クレカ。しかし、世界的に見ても高水準を誇るリピート率の裏側には、アナログで地道な人の手によるメンテナンスが潜んでいました。

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