はじめに
もはやパワーカップルしか買えない?
同社の公表した資料によると、首都圏の新築マンションの供給数は低迷しています。2013年には5万6,478戸の供給がありましたが、2018年には3万7,132戸に止まりました。
一方で、郊外物件が減り、都心部の物件の比重が高まってきたことで、平均販売価格は上昇傾向にあります。2012年の平均販売価格は4,540万円でしたが、2018年には5,871万円と、約1.3倍にまで高騰しました。
背景には、共働き世帯の増加があるとみられます。新築マンション購入者に占める共働き世帯の割合は、2008年の37.4%から、2018年には52.4%に上昇。共働きといっても、夫が収入の主体で妻はパート程度というのではなくて、夫婦同等に稼ぐ世帯、いわゆるパワーカップルが目立つといいます。
合わせて、いくらまでローンを組むことが可能かという借入可能額も上昇。2008年の4,998万円から、2018年には5,778万円となりました。
妻がバリバリ働く世帯は、郊外ではなく、通勤の利便性や保育施設の充実などを優先した都心部のマンションを好む傾向にあります。マンション価格が上がっても、ダブルローンを組んで購入できるというわけです。
強化するのはどんな物件なのか
そこで今回の中期計画で打ち出すのが、子供のいない世帯や単身者、アクティブシニアをターゲットにしたコンパクトタイプのマンションの分譲。これまでのプラウドシリーズは、夫婦と子供の3~4人暮らしで、広さは70~80平米の3LDKタイプというのが標準的で、新築のほとんどを占めていたといいます。
一方、コンパクトタイプは、60平米前後と専有面積は小さいものの、都心への通勤利便性が極めて高い立地で、価格は6,000万~7,000万円台というイメージ。このような間取りを今後増やし、ファミリー層の需要減少に対応していく方針です。
沓掛社長は「郊外からの通勤1時間より都心の30分。東京駅まで近いエリアのニーズが高まっている」と分析します。同社では、東京都江東区の門前仲町や豊島区の東池袋などにプラウドシリーズの大型マンションを相次いで建築し、売れ行きは好調です。今後も、葛飾区の金町や江東区の亀戸など、都内でも東側のエリアで大型物件を開発する計画です。
野村不動産の今後のマンション開発計画
都内のマンション価格は高止まりし、需要が低迷しているという指摘もあります。都心の新築マンションは高すぎて買えないけれど、通勤に便利な街に住みたいという層には、この野村不動産の方向転換は、何かの行動を起こすきっかけになるかもしれません。