はじめに
株主のためか、得意客のためか
一連の会社からの説明が終わり、株主総会は質疑応答へと移ります。最終的には15人の株主から質問や意見が出ましたが、今回は株主以外も関心がありそうな、イオンの商品やサービスに関するやり取りを抜粋して紹介します。
同社の店舗を頻繁に利用するユーザーにとって関心が高いと思われるのは、「イオンラウンジ」に関するやり取りでしょう。このラウンジはイオンの大型店舗に設置されていて、買い物の合間にフリードリンクや試供品のお菓子を食べながら、休憩できるという施設。常連客に大人気で、休日には30分以上の待ち時間が発生する店舗もあるようです。
今回の株主総会で質問に立った株主は、こうしたラウンジの混雑状況に関して改善策を要望しました。これを受け、イオンラウンジの発案者でもある岡田社長は「30年間で株主数がとんでもなく増え、たくさんの方に利用していただいています。本年中に、株主のためのものか、お得意様のためのものか、どちらかにせざるをえない」と言及しました。
現在、イオンラウンジを利用できるのは、
(1)イオンカードで年間100万円以上の買い物をした人に発行される「イオンゴールドカード」の保有者
(2)イオンカードを系列店舗で年間40万円以上利用した人に発行される「イオンラウンジ会員証」の保有者
(3)イオンの株主に発行される「イオンオーナーズカード」(イオン北海道、イオン九州も個社ごとで発行)
という3種類のカード保有者。1枚のカードで最大4席まで利用できます。岡田社長の説明では、(1)もしくは(2)の該当者か、(3)の該当者か、どちらかにラウンジの利用を限定する方向で検討を進めていることが読み取れます。
株主を対象にした特典という意味では、イオンモバイルで株主を対象に、通話料の割引やデータ通信量の増額といった特典はないのか、という株主からの質問もありました。これに関して、岡崎双一副社長が「今のところ、株主を対象としたサービスは用意していませんが、さらなる利用者拡大に向けた貴重な意見にしたい」と回答しました。
イートイン客の優遇策も検討中
一方、株主でなくても恩恵が期待できそうなやり取りとしては、10月に予定されている消費増税の負担軽減策である「軽減税率」に関するものがあります。
政府の方針では、持ち帰りの場合は消費税率が軽減されて8%になる一方、イートインの場合は10%の税率が適用されます。イオンではこれまでイートインを1つの核とした店舗づくりを進めてきただけに、今回の軽減税率の導入は逆風となりかねません。
その対策について株主から聞かれた岡崎副社長は「さらに利用していただけるよう、特別なサービスを検討しています。10月に発表を予定しています」と言及しました。
ほかには、子育て中の家庭にプラスとなりそうなやり取りもありました。
現在、0歳の子供がいるという株主が「イオンのプライベートブランドの冷凍食品には、離乳食に使える、野菜を裏ごしした商品はないのか」と質問したところ、柴田英二執行役は「今後、オーガニック原料を使ったデザートなどを売り出していくので、離乳食にも使っていただけるのではないでしょうか」と回答。子育て世帯への対応を検討する考えを示しました。
10時に始まった株主総会は、11時33分に終了。議案である「取締役8人の選任」は賛成多数で可決されました。