はじめに

米中の貿易問題をめぐる対立の激化から、株式市場を取り巻く環境は、春先までの楽観ムードから、足元では予断を許さない状況へと変化しています。

米国は2,000億ドル分の中国製品に対する関税を5月10日から25%に引き上げ、中国側も報復措置で対抗しました。さらに米国は、残りの中国製品3,000億ドル超分についても関税引き上げの準備を進めるとともに、中国の通信機器大手ファーウェイとの取引を禁じるなど、米中問題は緊迫の度合いを増しています。

こうした貿易摩擦の深刻化は、世界経済の見通しにも暗い影を落としています。再び世界の株式相場が上昇基調に回帰していくためには、米中間での対立回避・合意形成が必要不可欠といえるでしょう。


注目イベントは日本開催のG20

交渉妥結・最終合意のタイミングとして意識されるのは、日本でG20の首脳が集う6月下旬。米中首脳会談の実現とともに、2大国による歴史的な決断・合意が日本で交わされる可能性もあります。

現時点でその結末を予想するのは極めて困難ですが、そこで一気にケリがつけば、株価が急反発に向かう可能性も捨てきれません。とりわけ、今回の調整局面で相対的に大きく売り込まれた中国株や日本株は、必然的に反発の余地が大きくなりそうです。

そう考えると、現時点で相場の方向性を上下いずれかに決め打ちするのも悩ましい問題といえます。合意か決裂か、米中交渉の結果を両にらみしながら、その後の展開に備えたいところです。

米国経済は粘り腰

貿易問題の行方は流動的ですが、少なくとも足元の米国のファンダメンタルズは堅調です。1~3月期の実質GDP(国内総生産)成長率は+3.1%と、2018年10~12月期実績、市場予想を上回る良好な着地となりました。純輸出と在庫投資が一時的に押し上げた側面もありますが、それを割り引いても、おおむね巡航速度で成長しているイメージです。

一方で、ミクロの企業業績のほうは1~3月期の決算が小幅ながらも前年同期比 1.5%増益で着地したもようです(5月31日時点)。決算発表が始まる前には、11四半期ぶりの減益が予想されていたため、それを覆すポジティブな結果と評価できます。

2019年通期の業績に関しては、現時点で3%程度の増益が見込まれています。2018年の24%増益と比べると相当見劣りしますが、不安定な経済情勢を考えると、まずまずの水準といえるでしょう。

最近の業績見通しをめぐる特徴的な動きとして指摘できるのは、リビジョン・インデックス(アナリストによる業績予想の修正を指数化したもの)の改善です。もともと米国の業績見通しは日本や欧州などと比べて先行して改善傾向を示してきましたが、4月末・5月初めの段階で、米国のリビジョン・インデックスは約半年ぶりにプラス転換を果たしました。

貿易摩擦が激化する前の見方である点には注意が必要ですが、裏を返せば、貿易問題さえなければ、業績回復のポテンシャルは十分に高いということになります。今後、2019年の増益率が切り上がっていくことで、米国株には上昇の余地が広がるとみています。

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