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米中「新冷戦」下で地球上に有望な投資先は残されているか

最新グローバル投資戦略

有望なのは欧州大陸株?

グローバルの株式市場が米中問題一色となる中で、意外な堅調さを見せたのが欧州株、とりわけ大陸の欧州株です。

英国のEU(欧州連合)離脱期限はひとまず10月31日まで延期されたとはいえ、問題先送りの側面が強く、くすぶり続けるリスクを完全に無視することはできません。ただ、ひとまずはこの問題を脇に追いやれたことで、市場参加者の間で解放感が高まっていることも事実でしょう。

また、米国と同様に、金融当局の緩和的なスタンスが景気の下支えに一役買っている点も指摘できます。ECB(欧州中央銀行)は3月の金融政策理事会で、少なくとも2019年中は政策金利を現行水準で維持することを決めており、低金利がある程度、有効に機能しているもようです。さらに、同時に進行する通貨安が企業業績の改善を促している面もあります。

最近の欧州株のリビジョン・インデックスは顕著な回復を見せており、場合によっては日本よりも先にプラス転換する可能性があります。中国の需要減退の影響はもちろんネガティブですが、それを補って余りある内需の回復が1つの拠り所となります。激化する米中問題を尻目に、浮上する可能性のある欧州株の動向には要注目です。

中国株はどう攻めるべきか

5月に入って米中貿易摩擦が激化して以降、中国株は軟調な推移を強いられています。上海総合株価指数は4月中旬に一時3,270ポイントまで上昇し、2018年3月22日(米国が第1弾の関税引き上げを表明した日)以来の水準を付ける場面もありましたが、その後は下落に転じています。いうまでもなく、貿易摩擦の影響で中国景気の先行きに不透明感が高まっているためです。

当面はこの米中貿易問題の行方を注視していかざるを得ないわけですが、貿易への依存度から考えて、やはり中国にとっては分が悪いといわざるを得ません。IMF(国際通貨基金)の試算によると、米中相互に全輸入品に25%の関税をかけた際の実質GDPの押し下げ効果は、米国のケースで0.3~0.6%であるのに対して、中国は0.5~1.5%とされています。

今年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、構造改革路線を見直して成長優先路線へと大きく舵が切られました。その中でのポイントとして、「雇用の拡大」がマクロの重点政策として位置づけられた点は興味深いものがあります。

雇用の拡大は製造業を中心とする輸出産業によって支えられる面が大きく、それゆえに中国側は妥協を受け入れざるを得ないように思えます。いずれにしても米中問題の方向性が見定まるまでは、中国株全体に対して様子見姿勢が強まりそうで、好業績株や政策関連株への個別物色に徹することが賢明とみられます。

日本株に過度な悲観は不要のワケ

他方、米中貿易摩擦の狭間で揺れる日本株のパフォーマンスは、どちらかというと中国寄りです。

中国との経済的な結び付きの強さを考えれば、ある意味当然かも知れませんが、この問題が決着するまでは、日本株の方も一進一退の展開が予想されます。相場が大きく崩れないだろうと考える理由は、中国影響の大きさにもかかわらず、日本企業の業績が意外に堅調さを保っているためです。

直近で大和証券がまとめた主要企業(大和200)の業績見通しによれば、2019年度の業績は前年度比+3.6%の経常増益となることが見込まれています。仮に、この見通しが現実のものとなった場合、経常利益ベースで8年連続増益、4年連続最高益更新となります。日本企業の業績推移には底堅さが読み取れ、日本株への過度の悲観は当てはまらないように思えます。

しかし、マクロの面では、国内景気の減速懸念が強まっていることは否定できません。5月に発表された景気動向指数(3月分)を基に、内閣府が示した景気の基調判断は、6年2ヵ月ぶりに「悪化」に転じました。それと同時に、今秋に控える消費増税に対しては再々延期の可能性を指摘する声が増え、消費増税実施の有無をめぐる議論が足元で活発化しています。

消費増税のマーケットへのインパクト(プラスかマイナスか)に関しては、市場参加者の見方が分かれるところです。現時点で増税実施は既定路線とみられますが、明らかに景気のモメンタムが下向く中での増税強行とそれによる市場へのダメージは、言をまたないでしょう。目先は米中貿易問題の落とし所とともに、消費増税実施の有無についても注視していく必要がありそうです。

<文:投資情報部 チーフ・グローバル・ストラテジスト 壁谷洋和>

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