はじめに
10連休後の株式市場は下落でスタートし、その後もジリ貧の展開が続いています。6月5日の相場は少し戻しましたが、4月以前の水準に戻るほどの勢いは感じられません。市場心理が後退して起きる「リスクオフ」という現象が起きているようです。
一番の原因は米中貿易摩擦ですが、他にも複数の要因が重なっています。6月に入ってからの一段の下落には、米国の利下げへの思惑があるように感じます。少し掘り下げてみたいと思います。
リスクオフは金利低下・円高と同時並行
リスクオフは、ショッキングな出来事やニュースなどをキッカケに起きる現象です。紛争や政策発表などの具体的なアクションもあれば、政府要人の発言や憶測記事だけでも発生します。そして、景気や企業業績に直接影響がある場合も、まったく関係がなさそうな場合もあります。
前者で言えば、EU(欧州連合)離脱に関する英国国民選挙(2016年)やアップルの下方修正(今年1月)がそうです。一方、北朝鮮のミサイル発射や核実験などが後者に該当します。
市場心理の変化なので、事前に想定されていなかったサプライズを呼ぶ材料に大きく反応しやすい傾向にあります。たとえば米中貿易摩擦の場合、相互の追加制裁関税の発表も、3回目、4回目となるにしたがって反応が小さくなる傾向にあるものの、仮に4回目が想定外だった場合には改めて大きく反応することもあります。
市場がリスクオフに動いた場合、株式や原油などの価格変動が大きいリスク資産が売られ、債券や金などの価格が比較的安定している安全資産が買われる傾向にあります。
また、「有事のドル買い」「有事の円買い」などと呼ばれて、米ドルと日本円が買われやすく、ドル高・円高となるのも特徴です。米ドルと円との間では、近年は円のほうが強く、米ドルに対して円高となることが増えています。
連休直前の4月26日と6月5日(海外は4日)の終値を比べると、リスク資産では、日経平均株価▲6.6%、NYダウ平均▲4.6%、NY原油価格▲14.8%とそれぞれ下落しています。一方の安全資産は、金価格が3.1%上昇し、米長期金利と国内長期金利も低下しました。為替レートも米ドルとユーロもどちらも円高になっており、典型的なリスクオフといえるでしょう。