はじめに
"学び直し"して最も役に立ったのは?
そうなると気になるのは、“学び直し”して実際役に立ったと感じているの?という点です。そこで、「実際に取り組んだ」こととしてその項目を選んだ人が、「実際に学び直してみて、仕事に役立ったと思うもの」でも同じ項目を選択した比率を集計してみました。
トップは、IT・WEB・OAなどコンピューターの専門技能。9割近い人が役立つと答えています。確かにニーズが高く、実用性も高そうなイメージがあります。
意外な感じがするのは、学位の取得が2位に入っていること。さらに踏み込んで調べてみると、仕事に役立つと答えた7人のうち6人が、学び直したい理由として「転職・再就職など新たな仕事に就くため」または「携わっている仕事で必要性を感じたため」のいずれかを挙げていました。
学び直しで学位取得というとハードルが高そうな印象ですが、取り組んだ人の母数が少ないことから推察すると、希望する仕事に学位取得が役立つか否か十分吟味してから取り組んでいるということかもしれません。
一方、仕事に役立つと答えた人の比率が一番低かったのは「理系分野の教養を深める学問」ですが、それでも50%あります。思い切って学び直しに取り組んでみると、半分以上の確率で仕事にも役立つ可能性があると言えそうです。
学び直しのネックになっていること
9割以上の人が学び直しを望み、実際に学び直すと5割以上の確率で仕事にも役立つとしたら、社会全体で学び直しをもっと推奨した方がいいように思われます。
しかし冒頭で見たように、日本の学び直しは他国と比較して進んでいるとは言えません。その理由が、調査に寄せられたフリーコメントから垣間見えました。
「時間に余裕がないため、働きながら学び直すことは難しかった。また正社員を辞めてからは、費用の面から一歩踏み出せなかった(40代:パート/アルバイト)」「時間がないと言い訳してやっていません(40代:派遣社員)」「時間的、金銭的に余裕がないとできない。社会人大学院に30代半ばで通いましたが、年下はほとんどいませんでした(40代:正社員)」
時間とお金に“余裕”がないことが、大きなネックになっているようです。仕事も家事も育児も担う働く主婦は、毎日が目一杯。お金も、自分のための教育費より子どもの教育費の方がどうしても優先になりがちです。
生涯にわたって学び直しできる社会に
時間にもお金にも余裕がない状態から、どうすれば逃れることができるのでしょうか。もし働き方を変えられたとしても、家事育児に追われていては時間に余裕は生まれません。
一方、もし家事育児から解放されても、金銭的に余裕がなければやはり無理です。働き方、家事育児、金銭補助などのあり方を総合的に見直す必要があります。
学び直しには、仕事に役立つだけでなく、学びそのものから得られる喜びが、人生をより豊かなものにしてくれるという意義もあるはずです。
誰もが生涯にわたって、安心して学び直しし続けることができる世の中にする、という観点から社会システム構築を考えることも必要なのではないでしょうか。