はじめに
注目された6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受けた20日の外国為替市場は、ドル売り一色に染められました。
政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は現行の2.25~2.50%で据え置かれたものの、米連邦準備理事会(FRB)は景気を重視する「ハト派」姿勢を強めたとの受け止めが広がり、米金利にさらなる低下圧力が掛かったことが背景です。
中東情勢の緊迫化も重なり、ドル円相場は一時1ドル107円台前半と、今年1月3日にドルが瞬間的な急落を演じた(フラッシュ・クラッシュ)時以来の円高・ドル安水準を付ける場面がありました。ドル円相場は、このまま円高・ドル安の流れが強まっていくのでしょうか。
FRBの本音は小幅な「予防的利下げ」
今回のFOMC会合は、市場が前のめりに米利下げを織り込む中で開催されました。米国の政策金利であるFF金利の先物の動きをみると、市場は年内2回、計0.50%以上の利下げを見込んでいることがわかります。
しかし、FOMC参加メンバー17人の政策金利見通しをみると、7人が今年中に2回(0.50%)の利下げを見込む一方、2020年以降にさらに政策金利を引き下げるとの予測はありませんでした。2021年には利上げ再開をにらむ姿も示されており、本格的な景気悪化を警戒しているわけではなさそうです。
米景気の現況をみると、ISM製造業景況指数などの水準自体は依然として雇用意欲の減退を招くほど低くはなく、タイトな雇用情勢を映じた賃金上昇を支えに消費者マインドは高水準を維持。金利低下が刺激となり住宅投資にも回復の兆しが出てくるなど、米国の国内総生産(GDP)の7割強を占める家計部門(個人消費+住宅投資)に変調の兆しはほとんどうかがわれません。
これらを踏まえると、FRBが検討しているのはあくまでも景気減速を未然に防ぐための小幅な「予防的利下げ」で、貿易戦争で弱含んだ企業家心理などの立て直しが主な目的とみられます。今週末の米中首脳会談の結果いかんでは、市場が確実視する7月FOMC(30~31日)での利下げが見送られる可能性もゼロではないと思われます。
また、世界の主たる中央銀行が押し並べて「ハト派」的な姿勢に傾いていることから、FRBが利下げに動いても、欧州や日本などに比べた相対的な米金利の高さは維持される公算が高く、ドル売りを進めにくい地合いを形成することになりそうです。