はじめに

投資家への対峙姿勢は?

実はこの会社、時価総額が7兆円以上もあって、全上場会社の中でもトップ10の常連なのに、少し前まで証券アナリストが「頑固3兄弟」と呼んで揶揄する会社でした。アナリストの取材にも応じず、株主との対話にまったく関心を示さない3大企業の1つに数えられていたのです。

少し前までは、ホームページも株主との対話姿勢が感じられない作りでした。適時開示や有価証券報告書はいっさい掲載せず、決算短信も直近四半期のものしか掲載していませんでした。

有価証券報告書はEDINET(金融商品取引法に基づく開示書類に関する電子開示システム)を検索すれば過去5年分が出ますし、適時開示も東京証券取引所のホームページで見られますが、リンクを張ることすらしていませんでした。

さすがに今はごく普通の上場会社のホームページになっていますが、有価証券報告書の素っ気なさは相変わらずです。総ページは62ページ、「対処すべき課題」はわずか12行、記載内容も長年ほとんど一緒です。毎年、年間数十億円規模の設備投資を実施しているのに、設備投資計画の欄も白紙にしています。

業績予想もいっさい出さず、決算説明会も開かず、説明資料も作らないという点も変わっていません。

個人投資家にとっての投資妙味

もっともこれだけ成長していると、どんなに投資家に背を向けていようとも、投資家のほうから群がってくるわけで、株価は高水準です。

業績予想を出していないので、予想PER(株価収益率)は算定できませんが、PBR(株価純資産倍率)は4.95倍です。最低購入単価は6月21日終値ベースで681万円もします。1単元買うだけでこれだけのお金が必要なのです。

最低購入単価

取引所はバラバラだった単元株数を100株に統一する方針を掲げ、実施してきました。そこには、発注ミスを減らすことと、最低購入代金を個人投資家でも手が届く程度の価格にする、という2つの目的がありました。

キーエンスは売買単位を1995年4月に早々と1,000株単位から100株単位に引き下げています。100株単位にしてもこの水準ですから、ごく普通の個人にはまず買えません。1,000株単位の時代は、1単元買うのに1,000万円以上必要でした。

配当性向も30%以上がスタンダードになっているというのに、この会社はわずか10%。それでも投資家が、それもプロの投資家が群がってくる。それが上場会社中、最高の給与水準の会社なのです。

この記事の感想を教えてください。