はじめに

転職時の退職金は"前借り"なので大事に

転職する人が老後への備えを万全にするためには、「転職時の退職金」の活用がカギとなります。転職時の退職金は、本来定年退職時に受け取るものを“前借り”しているようなものです。それなので、転職活動費や生活費などへ回すのではなく、そのまま「持ち運び」をして、老後までお金を殖やす工夫をすることが大切なのです。転職時の退職金を持ち運ぶ先を4つ、パターン別に紹介します。

図2.転職時の退職金の主な持ち運び先

退職金持ち運び先

※資料:執筆者作成

(1)転職先の企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)

転職先の会社が企業型確定拠出年金を導入している場合、転職前の会社の企業型確定拠出年金や厚生年金基金、確定給付企業年金の資金を持ち運ぶことができます。転職先が企業型確定拠出年金を導入していない場合には、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移すことができます。

企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)は、資産運用で得た利益が非課税となるため、通常の課税口座で運用するよりも有利となります。原則60歳まで引き出せないという制限があり、確実に老後資金を確保することができるためおすすめの方法となります。

また、条件が合えば自己資金から毎月拠出することもできます。掛け金が全額所得控除となるため、効率よく老後資金を増やすことができます。

(2)企業年金連合会(通算企業年金)

転職前の会社から支給される退職金のうち、厚生年金基金と確定給付企業年金については、厚生労働大臣の認可を受けて設立された「企業年金連合会」に預けることができます。通算企業年金の大きな特徴は、公的年金である厚生年金に上乗せして終身年金(通算企業年金といいます)として受け取れることです。

預けた資産は一定額の事務費を控除した後は、資金を預けたときの年齢に応じて予定利率0.50%~1.50%で企業年金連合会に運用されます。転職時の退職金を資産運用する予定がなく、現在は低金利となっている銀行に預けておくよりは良いと思う方は、前向きに検討してみましょう。

(3)転職先の厚生年金基金、確定給付企業年金

転職前の会社が厚生年金基金や確定給付企業年金だった場合、転職先の規定次第では、転職先の厚生年金基金や確定給付企業年金に資金を移動できることがあります。

資金を預けることで退職金がどのくらい増えるかどうかは転職先の企業年金の規約次第なので、内容をよく確認してから資金を移動するかどうかを考えましょう。

(4)自分で管理して資産運用を行う

転職前の退職金規定次第では、別の制度へ持ち運びができないことがあります。その場合、受け取った退職金には手をつけず、老後まで資産運用をしていきましょう。資産運用は元本割れのリスクを伴うものなので、今まで経験がない人はまとまった金額をいきなり全額資産運用に回すのは危険です。資産運用について勉強しながら、毎月少しずつ積み立てる形にするとリスクが抑えられるでしょう。資産運用する際には、個人型確定拠出年金(iDeCo)や「つみたてNISA」などの運用益が非課税になる制度を活用するのがおすすめです。

転職時は忙しくてなかなか退職金のことまでは頭が回らないかもしれません。しかし、転職時の退職金は、どこに預けるのか、どうやって資産運用するのかによって、老後に使える資金の額が変わります。自分に合ったお得な持ち運び先を選ぶようにしましょう。

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