はじめに
ベトナムへの熱視線は継続か
MSCIはレビューレポートにおいて、ベトナムの課題として昨年に続いて、厳しい外国人投資規制があることや、英語での投資情報が限られていること、また、市場関連法令などについても英語の法文が開示されないケースがあることなどを挙げています。
さらに為替についても、オフショア市場(金融規制などの面で比較的自由な取引を認めた非居住者向けの金融市場)がないことや、証券取引に関連する取引しかできないことなども指摘しました。
一方でMSCIは、フロンティア市場の概況を述べる項目の大半を、ベトナム政府が推進する証券市場改革に割くなど、引き続きベトナムへの注目度の高さがうかがえました。
タイで好評の「新種証券」導入が追い風
ベトナム政府は1月、ホーチミン証券取引所とハノイ証券所の統合や、証券取引の決済における中央決済機関の設立などを含む、証券法の改正案を公表しました。
この改正案には、取引時間の拡大や外国人投資規制のさらなる緩和なども盛り込まれましたが、先月、政府はさらに踏み込んだ施策を盛り込むことを明らかにしました。それはNVDRの導入です。
NVDRは、外資保有制限などのために投資できなかった外国人投資家のために、2000年にタイ証券取引所で導入された無議決権預託証券です。取得した外国人投資家は、株主としての議決権がないものの、値動きは普通株式に連動し、配当なども普通株主と同様の権利が得られることから、タイ株式市場で一般的に売買されています。
ベトナムでは2015年の法改正により、国防や治安に影響を及ぼす分野や、銀行などの一部業種を除き外資保有制限が撤廃されました。しかし、外資保有制限の撤廃は企業側の判断に委ねられたため、企業側が当局から外資企業と判断され、事業上の支障となることを恐れ、実際に外資保有制限を撤廃した企業は全体の5%程度にとどまっています。
NVDRは外国株主に経営権を譲る心配なしに、外国からの投資を呼び込めるメリットがあり、株式市場に資金流入が拡大することが期待されます。早ければ10月にも改正証券法が施行される見通しで、施行されればベトナムの格上げに弾みがつくでしょう。今後の法改正の行方に外国人投資家は熱い視線をそそいでいます。
<文:市場情報部 北野ちぐさ>