はじめに
7月16日に「株取引のT+2化」が実施されます。これに伴い、従前と比較して1日早く株取引が完了するようになります。
市場では、この変更による投資家の利便性向上が期待されていますが、制度が変わる当日近辺では不測の事態が起こる可能性もあります。SNSなどではあまり言及されていないリスクについても理解することで、不測の事態にも備えられるようにしておくとよいでしょう。
「T+2化」が意味すること
「T+2」の「T」とは、取引成立日のことをいいます。「+2」とは取引成立日から株式や資金の受け渡しまでにかかる日数が2日であることを示しています。現在は「T+3」という制度であるため、取引成立日から株式や資金の受け渡しまでにかかる日数は3日ということになります。
アメリカ、欧州、シンガポールといった海外の主要株式市場では、すでに「T+3」から「T+2」への変更を実現しており、日本はこの分野で後れを取っています。株取引が完了するまでの日程が日本と海外の間で異なると、日本向けの取引について特別な配慮や資金の調整を行わなければなりません。
海外の投資家がめぼしい企業を見つけても、「日本は不便な市場だから投資をしない」という判断となれば、大きな機会損失となります。そのため、「株取引のT+2化」は日本市場の国際競争力を向上させるために必要不可欠な変更といって差し支えないでしょう。
個人投資家にとってのメリットは?
個人投資家にとって一番のメリットは、受け渡しまでの期間が短縮されることによる流動性や資金効率の向上にあるといえます。
これまでの「T+3」では、仮にある会社の株を売却しても、売却した資金が使えるようになるには取引成立日から3日後になります。「T+2」になると現在よりも1日早く出金できるようになり、機動的に資金を活用できるようになります。
たとえば、株主優待や配当金の権利を獲得するために株式を保有しなければならない場合、権利落ち日までに土日や休日が挟まる可能性があります。
仮に「T+3」のまま今月末の権利確定日を迎えるとした場合、権利付最終日は7月26日(金)となります。この時、株主優待や配当金を得るためには、土日を挟んだ7月29日(月)にその株式を売却するか保有し続けるかを選択しなければなりません。
もし土日に何らかのイベントが発生した時、思わぬ価格変動が生じてしまい、もらえる配当金や株主優待以上の損失が発生することがあるかもしれません。しかし、「T+2」で受け渡し日が短縮された結果、今月については土日の市場変動リスクを回避して株式を保有することができるようになります。
「T+2」に変更されると、通常であれば権利確定日が水曜日から金曜日の間である場合、土日の市場変動リスクを回避しつつ株主優待や配当金取りのための取引が可能になります。