はじめに

長期投資の観点では気にしなくて良い?

基本的に、中央銀行は短期的な景気変動を調整するために利上げをしたり、利下げをしたりします。従って、世界の成長トレンドを長期投資で獲得しようとする投資家にとっては、短期的な変動要因を知ることはあまり重要ではないと考えることができます。仮に、中央銀行が金融政策を短期的に誤ったとしても、長期的に変更することができますし、いつまでも間違い続けるとも考えられないからです。

先にお伝えした1980年代以降の予防的利下げは、大きなショック時に行われました。今回は、物価が予想以上に上がらないことに対応しようとしている点で、大きく異なっています。

現時点で多くの人が未来にまだ自信を持てず、貯金を増やしたりローンを返したりしていたとしても、時間とともに収入や仕事に安定感と自信を持つようになれば、消費が増えて物価が上昇しやすくなる可能性があります。

米国が7月に利下げし、かつ「予防的」と呼ばれて市場の信認を得ることができれば、物価と金利が適切に上昇することでしょう。最近の経済指標をみると、市場心理を表す経済指標には悪化しているものもありますが、実体経済を示す指標はほとんど悪化を示していません。

リスク資産の長期保有の基礎は、世界経済の成長にあります。人は努力し工夫するので、長い目で世界を幅広く見る限り、経済が成長する可能性は高いのです。

FRBが今回どのような政策をとるとしても、米国、ひいては世界の長期的な成長の妨げとなる政策をとらないと信じて良いのではないでしょうか。

<文:チーフ・ストラテジスト 神山直樹>

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