はじめに
菓子折り、稽古のお礼。自ら負担したものも
――初回はTBSの出水麻衣アナウンサー、宇垣美里アナウンサー(当時)など、4人のアナウンサーが参加されました。「朗読会をやりたい」と相談したときの、アナウンサーの皆さんの反応はいかがでしたか?
参加したアナウンサーで、過去の朗読会に出演したアナウンサーは誰もいませんでした。いきなり「朗読をやる」といわれて戸惑ったと思います。でも、4人とも見事な朗読を披露してくれました。演出家に稽古を付けてもらったのですが、練習にも真剣に参加してくれました。
――TBSのドラマの演出家の方ですか?
いえ、私が個人的にお願いした、舞台の演出家です。知り合ったのは私が30代前半の頃。当時は子育てにも忙しい時期でしたが、自分のキャリアを模索する上でも、アナウンス技術を磨きたいと思って、個人的に依頼していた方です。
朗読会の予算からも少し謝礼をお支払いできたのですが、やはりあまり多くは出せなくて…。私から心付けをお渡しすることもありました。会場を交渉する際の手土産代なども自分で負担していましたね。
でも、ある程度、軌道にのるまではそれもしかたないと思っていたんです。なにせ、実績がないので。それでもいいから、いい朗読会をやりたい。その一心でした。
朗読会の参加費は無料で、ラジオのリスナーを対象に4番組で募集を行いました。定員は30人でしたが、応募はなんと約500人。想定を上回る反響に驚くと同時に、手ごたえを感じました。
ママ友の縁で2回目の会場が決まった
――朗読会の2回目の会場は結婚式場でした。1回目とずいぶん雰囲気が変わりましたね。
プライベートで映画を見ていたときに結婚式場(「セレス高田馬場」)のCMが流れて。「ステキなところだな」と思って、帰宅して早速メールをしました。先方の反応も良かったのですが、会場のレンタル代はどうしてもかかってしまうとのこと。悩みました。
借りたいけれども予算がない。なにかいい手はないだろうかと思いながら、結婚式場のサイトを眺めていたんです。
結婚式場の親会社は冠婚葬祭を幅広く扱っているのですが、そのサイトに見覚えのある「音楽葬」という文字が。仲良しのママ友のお母様の経営する音楽学院が、その音楽葬を担当されていたんです。
ママ友経由でお母様に連絡を取り、親会社の役員の方につないでもらいました。そこで改めて企画の説明をして交渉をして、結果的に無償でお借りできることになったんです。
――ママ友がつないだ縁ですね。
本当にありがたかったです。人のつながりの大切さを感じました。昔はママ友と話すことといえば子どものことばかり。どのドリルがいいとか、お弁当の中身をどうするとか。
でも、最近は集まると子どもの話抜きで盛り上がれるんですよ。老後や人間ドックの話とか(笑)。いつか、本当に子どもたちが巣立ったら、みんなで温泉旅行にでも行きたいです。
約20年、子育て中心の生活で、仕事としては与えられたことをこなすだけで精一杯の日々。
長女の通う公立小学校ではPTA活動に積極的にかかわっていて、学校に「マイスリッパ」を置いておくほど(笑)。とにかく頻繁に学校に通っていました。
長男は保育園の年長からリトルリーグにも入っていたので、その手伝いや応援で土日も忙しかったんです。
でも、子育てが一段落し、余裕ができたことで、もっといろいろなことをやってみたくなりました。
社内の人やママ友だけでなく、もっといろいろな人と話してつながっていこう。そう思って行動していたら、「エーラウンジの次の会場にどうですか」なんてお誘いが舞い込んだり。蒔いた種がここへ来て芽を出してきたような感覚です。