はじめに

予備選日程そのものの「前倒し」

カーター氏の勝利以降、候補者たちは選挙年の前年や2年前からアイオワ、ニューハンプシャー両州で選挙運動をするのが一般的になりました。実際、両州の戦いについての報道の量も極めて多いのです。「アイオワ州の農家を支援する政策」などを各候補がこぞって強調するようになりました。このことが他州の不公平感を高めることにつながります。多くの州は自分の州へのメディアの注目を増やし、各候補に自分の州に関連する政策を公約にさせようと、両州にできるだけ近い段階で予備選・党員集会の日程を組むようになっていきました。

その結果、かつては選挙年の6、7月が山場でしたが、近年は3月末くらいまでに代議員数の過半数が決まることも一般的になりました。これを予備選の「前倒し(フロント・ローディング)」現象といいます。たとえば2020年の民主党の指名候補争いの場合、上述の開始から1カ月のスーパーチューズデーまでに約4割の代議員が各候補に割り当てられます。

生き残りの戦い

現在の民主党の指名候補争いが激しくみえる背景には、選挙戦術の変化と予備選日程そのものの前倒しという制度的な問題があります。実際の投票は先だが、「佳境に入る」段階であるといっても過言ではないのです。これから年末にかけて20人以上いる候補者の中で、数人に絞られていきます。当面、「バイデン氏下ろし」「トランプ氏たたき」という2つの基調の中、ウォーレン氏対サンダース氏の民主党の最左翼争いが続きます。世論調査で5ポイント程度の支持しかないブッカー氏、オルーク氏以下の立候補者はなかなか厳しいのですが、注目を集めるためにユニークな主張を展開し続けるのではないでしょうか。また、年明けになったら、上述の特別代議員制度の改革も何らかの戦い方に変化を生むのかもしれません。激しい生き残りの戦いが続きます。

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