はじめに

8月9日上場のステムリム(証券コード:4599)からひと休みに入っていた日本株のIPO。それが9月12日、ピー・ビーシステムズ(4447)の新規上場によって約1ヵ月ぶりに再開します。

IPOとは新規公開を指し、企業の株式が取引所で売買されるスタートラインに立つことを指します。株価の急騰が見込めるケースがある一方、投資初心者には銘柄の見極めが難しい面もあります。そこで今回は、IPO投資の特徴と注意点、見分け方などについて考えてみます。


IPO企業に投資することの意味

IPOでは、新規上場を前に幹事となる証券会社の協力を得て、機関投資家などへのヒアリングを通じ、企業が新たに発行する株式(公募株)の公開価格が決定されます。投資家は当該企業が有望だと思えば公開価格で公募株を購入し、IPOの日に備えます。売りと買いの株数が完全合致することで初値が決定しますが、初値は公開価格を上回ることがほとんどです。

一般的にIPO企業は投資家に馴染みは薄く、事前にアナリスト向けラージミーティングを開催して、自社への理解を深めてもらおうとします。そうした理由もあって、IPO企業の公開価格は本来の価値から割り引かれているケースが大半といっていいでしょう。いわゆる「プライマリー・ディスカウント」とか「IPO・ディスカウント」といわれるものです。

企業によってその割引率はまちまちですが、30%程度ディスカウントされているケースも珍しくありません。であれば、すべてのIPO企業の初値が公開価格を上回っているべきなのでしょうが、必ずしもそうした結果を生みません。

理由はさまざまです。人気がなかった、ミス・プライシングであった、などの場合も想起されますが、IPOまでの短い間で投資家への理解を得られなかったことに最大の理由があるのかもしれません。仮にそうした場合は、IPO後に理解を深められるようにもっていければ、IPO後の投資=セカンダリー投資のチャンスにつながるかもしれません。

逆にIPOで初値が急騰した場合には、往々にして「初値天井」と言われるパターンに陥り勝ちです。IPOの株価がなかなか初値を上回らず、ジリ安となるケースです。

確かに、ごくごく近視眼的に見れば、初値天井が多いことは事実です。しかしながら、IPOはゴールではなく、スタートです。IPO企業に本当の実力があれば、決算を経てその成長性が認知されるに従い、株価もさらなる高みを目指すことでしょう。

IPOの醍醐味が味わえるセクターは?

IPOでは、よく、第2のソニー(6758)を探せ、ホンダ(7267)を探せ、と言われます。「第2のソニーを探せ」は有望な成長企業を見つけることの比喩的な表現であり、「企業規模の拡大とともに投資先の株価が上昇していく」、まさしくIPO投資、換言すれば中小型成長株投資の醍醐味でもあります。

けれども簡単ではありません。まず、製造業の事業環境を考えると、人件費ひとつとっても、ソニーの成長期とは隔世の感があります。相対的に人件費が安価であり、先進国からの技術移転が盛んな新興国の勃興は、国内で第2のソニーを生み出すための大きな障壁となっています。

それでは、非製造業はどうでしょうか。これまでの成功例で顕著なのは、ヤフー(4689)でしょう。説明の必要はないでしょうが、ヤフーはインターネットのポータルサイトです。1996年1月31日の設立で、1997年11月4日に店頭市場に登録しました。今で言う、東証JASDAQへの上場です。

公開価格は70万円でしたが、初値は200万円。2019年9月2日終値は267円ですが、1999年から2006年までに1対2の株式分割を13回実施し、2013年には1対100の株式分割を実施しました。分割を考慮した株価は、上場時と比べると100倍を超えます。

ヤフーに限らず情報通信(IT)は、IPO企業の花形のようです。ディー・エヌ・エー(2432)、楽天(4755)、ソフトバンクグループ(9984)、これらIT企業はIPO後にも成長を続け、時価総額を拡大しています。

ちなみに、この3社の共通点、おわかりになりますか。そう、いずれもプロ野球の球団のオーナー企業です。時代の変遷を象徴しているようにも思えます。

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