はじめに

中年になっても実家を出ず、子供部屋に住み続ける成人男性を指す「子供部屋おじさん」、通称「こどおじ」。最近では、実家暮らしの男性が起こした事件が頻発したこともあり、社会問題的な色合いが濃くなりつつあります。

一般的には、実家暮らしのほうが一人暮らしで無駄な家賃を払わなくて良いといった金銭的な理由が、こどおじの生まれる背景だと考えられてきました。しかし、不動産情報サービス「SUUMO」がまとめた最新調査からは、別の理由が浮かび上がってきました。


若年層の過半数が「実家に満足」

SUUMOが9月24日に発表した「賃貸契約者動向調査」。2018年度に賃貸物件を契約した全国の18歳以上の男女約2万人を対象に、訪問した不動産会社の数や入居の決め手となった項目、自宅に欲しい住宅設備などを聞きました。

2005年から毎年行われている調査ですが、今回は初めて、契約した賃貸物件である新居と以前住んでいた実家では、どちらの満足度が高いかを聞きました。その結果、年代が若いほど、実家の住宅性能の満足度が高かったのです。

たとえば「遮音性」の項目。10代・20代では、52.9%が「実家の方が満足度は高い」とし、25.2%が「新居の方が満足度は高い」と答えました。しかし、40代になると逆転し、「新居の満足度が高い」と答えた人が36.5%と、「実家」(32%)を上回りました。

【年代別 今回契約した物件への満足度合い】
年代別・満足度合い
【実家建築年別 今回契約した物件への満足度合い】
建築年別・満足度合い
(出所)リクルート住まいカンパニー

「耐熱性/省エネ性」の項目でも同様でした。10代・20代では、39.8%が「実家の方が満足度は高い」と答え、28.8%が「新居」と回答。しかし、40代以上では、実家に満足していたのは21.9%に過ぎず、49.7%の人が「新居の方が満足度は高い」と答えたのです。これは、「耐震性」の項目でも同じ傾向が見られました。

2000年が“境界線”になる事情

調査ではさらに、実家の建築年も聞きました。「実家建築年が2000年以前」と「同2001年以降」で比較すると、「遮音性」「断熱性/省エネ性」「耐震性」のいずれの項目でも、2001年以降に建築された実家のほうが、満足度がかなり高いとわかりました。たとえば、2001以降建築の持ち家で、実家の遮音性に満足していた人は、74%にまで上りました。

では、なぜ2000年を境に、実家への満足度が大きく上がったのでしょうか。SUUMOの池本洋一編集長は「この年に『住宅性能表示制度』という新しい制度がスタートしたから」と説明します。

この制度は、住宅の耐震性や省エネ性、遮音性などの表示に統一したルールを設け、第三者機関の客観的な評価を受けるというもの。分譲住宅や注文住宅に導入されてから、明らかに住宅の品質が向上したといいます。

一方、賃貸住宅では、住宅性能が十分に家賃に反映できないなどの理由から、住宅性能を高めようという動きが広がりませんでした。その結果、それ以前に比べ、分譲住宅と賃貸住宅との間に大きな品質の差が生まれた、というわけです。

池本編集長は「実家の満足度には10代・20代と30代以降に大きな差がありました。若い世代は実家の住宅性能が上がったために、居心地の良い環境から抜けられず、ますます一人暮らしをしなくなるかもしれません。そうすると結婚もしにくくなり、こどおじ予備軍が増えそうです」と分析します。

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