はじめに
皆さんは「アノマリー」という言葉を聞いたことがありますか。投資の世界では「理屈や理論では説明できないが、経験的に観察される規則性」のことを指しています。
たとえば「2日新甫(しんぽ)は荒れやすい」という相場格言があります。これは1日が土日や祝日などで取引がなく、2日から取引が始まる月の相場は大きな値動きになりやすいということを指しています。当然、理論的根拠はありませんが、マーケットに関する仕事をしていると、確かに2日に取引が始まる月は株価がよく動くなと思うことがあります。
ちなみに、2019年の2日新甫は9月(今月)と12月のみです。9月は日経平均株価が10連騰し2万2,000円を一時回復するなど、これまでのところは順調に来ています。月末にかけて、まさかの波乱があるのでしょうか。
1年の中で投資成績が良い月は?
さっそく、月別の日経平均の投資リターンを確認したいと思います。なお、月別のリターンは、前月の月末の株価で購入し、翌月の株価で売却したものとして計算しています。
過去70年間のデータを集計したものが下表です。フタを開けてみると、最も平均騰落率が高かった月は1月でした。
相場格言に「1月効果」というものがあります。1月は新年を迎えて新たな資金が流入しやすいので株高になりやすいという格言ですが、本当にそれが理由なのかはわかりません。ただ、過去の実績を見ると、確かに1月効果が現れているようです。
投資成績の良い月の共通点
続いて成績が良かったのが4月でした。同月も新年度が始まり、多くの人が新生活を迎える季節で、新たな資金が市場に入ってきやすいのかもしれません。
その次に成績が良いのが12月、11月、3月、2月と、これからの時期です。こうして見ると、成績が良い月はすべて11~4月と、比較的寒い季節に集中しています。
寒い時期は家から出たくないので投資をする人が多いから……という理由ではないでしょうが、理屈では説明できないけれど傾向が現れている、まさにアノマリーといえるでしょう。
まもなく日本は秋本番でその後は寒い冬がやってきますが、アノマリー的には投資を始めるのに良い時期ということになります。今年の冬に投資にトライしてみるのも一法かもしれません。
毎年10月に成績が良い銘柄は?
アノマリーは個別銘柄にも存在します。下表は、過去10年間の個別銘柄ごとの月次リターンを集計したものです。過去10年間の株価データを取得できた2,237銘柄について、9月末と10月末の株価を比較しています。
すると、過去10年すべてで10月に上昇した銘柄はありませんでしたが、10年のうち9年で上昇した銘柄が11銘柄ありました。もちろん、今年も過去の傾向と同じになるとは限りませんが、参考にしてみる価値はあると思います。比較的時価総額の大きい有名な銘柄が多く入っている点がポイントです。
<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>