はじめに
手放す前提でものを買う
こうした「ものづまり」の状況をうまく回避するために、買い物の仕方を工夫している人がいます。ここでは、実際に生活者の自宅を訪れてのデプスインタビューから得られた発見をご紹介します。
都内在住の30代女性は、クローゼットに入る分しかものを買わず、買う時にも「ひとつ手放してからひとつ買う」ことを徹底しているといいます。手放しながら購入するので「ものづまり」が発生せず、お宅のクローゼットはとてもすっきりしていました。
また、この方は倹約家で贅沢はしない一方、コートやバッグ、靴などの長く使えるものはあえてハイブランドを買い、中古ショップやフリマアプリで高く売るようにしています。使っている際も、より高く売れるように綺麗に使ったり、買った時の袋や箱、ギャランティカードまできちんと保管しているそうです。
「ものづまりが起きないよう、はじめからいつか手放す前提でものを買う」という新しい消費行動が生まれつつあるといえるでしょう。
ものを手放すと、新しいものを買いたくなる
また、ものづまりの解消によって消費意欲が高まる経験をしている人もいます。
洋服が大好きな都内在住の40代女性は、すぐにクローゼットがいっぱいになってしまうので、その度に着なくなったものをまとめてリサイクルショップに引き取ってもらっています。そうしてクローゼットが空いた時の気持ちを聞くと、「もったいない買い物をしたな」という気持ち以上に「これでまた新しいものが買える!」という喜びが強く、ついついまた買ってしまう…ということを繰り返しているそうです。
消費の出口が詰まっている現状、生活者の消費意欲を喚起するには、入り口から「買ってください」と訴えるだけではなく、買ったものが不要になった時に簡単に手放せるシステムを予めサービスに組み込んでおくことも必要なのかもしれません。
※図の出典:博報堂生活総合研究所「消費1万人調査」
【調査概要】
・消費意欲指数
調査地域:首都40km圏・名古屋40km圏・阪神30km圏
調査手法:インターネット調査
調査対象:20~69歳の男女1,500人(各地域ごとに、人口構成比にあわせて割付)
調査期間:1993年から毎月実施
・消費1万人調査
調査地域:全国
調査手法:インターネット調査
調査対象:15~69歳の男女10,000人(国勢調査に基づき性年代・エリアの人口構成比で割付)
調査期間:2019年5月28日~6月1日
・消費エクストリーマー調査
調査地域:首都圏
調査手法:家庭訪問および会議室でのデプスインタビュー
調査対象:20~40代の男女(フリマアプリ・サブスクリプションを積極的に利用している方、
スマホゲームや趣味に積極的にお金を使っている方、家計簿に力を入れている方など) 10人
※機縁法およびweb・SNSを通じてリクルーティング
調査期間:2019年4月8日~6月14日