はじめに

新聞広告や書店の平積みで、不動産投資の本を目にする機会が増えたように思います。地主や資産家の方々が主に行ってきた不動産投資ですが、ここにきて“サラリーマン大家さん”が増えているのでしょうか。

年金に期待できない今、老後の安定収入確保のためにも気になる不動産投資。そのリスクと収支、節税効果について見ていきましょう。


不動産投資のキャッシュ・フロー

不動産投資の1年のキャッシュ・フローはどれくらいだと思いますか。空室リスクはないものとして、家賃8万円で賃貸できる都内の駅近25平米のワンルームマンションを2,000万円で購入したとします。このとき利回りは4.8%となります。

1年間の家賃収入は96万円。ローンの金利が2.5%(投資用の不動産購入のため、少し高めの設定)だとすると、返済期間30年で全額ローンを組んだ場合、毎月のローン返済額は7万9,000円になります。これに加えて、管理会社に入居者募集から退去精算まですべての業務を委託した場合の管理費が月額家賃の5%(毎年4万8,000円)、固定資産税が毎年7万円かかるとします。

いかがでしょうか。毎年の支出総額は106万6,000円となり、家賃収入の96万円を約10万円も上回っています。つまり、毎年の持ち出しが10万円ということになるのです。

家賃の下落リスクや退去ごとにかかる修繕などの費用、およそ12年ごとに行われる大規模修繕の費用などを考えたら、毎年の収支はかなり厳しいものになります。仮に返済期間を35年間に延ばすと、毎月のローン返済額は7万1,500円となりますので、毎年の支出額は97万6,000円、家賃を毎月1,000円だけ高めに設定できれば、収支はトントンになりそうです。

<35年ローンの場合の年間キャッシュ・フロー>

家賃収入96万円
ローン返済85万8,000円
管理費4万8,000円
固定資産税7万円
キャッシュ・フロー▲1万6,000円

不動産投資の節税効果

それでもなぜ不動産投資が注目されるのか。それはサラリーマンにとって赤字であれば節税効果が見込めるからです。この後で説明しますが、出口戦略として不動産の売却を考えると、投資の成功確率が高いと見込まれるからです。

サラリーマンが不動産投資を行う場合、不動産所得が赤字になれば給与所得と相殺できるというメリットがあります。

年収400万円のサラリーマンが先ほどと同条件のワンルームマンションを購入した場合、税金計算上、ローンの支払いは利息部分の49万5,000円(初年度)しか経費になりませんが、このほかに建物の減価償却費として22万円が経費になります(土地部分の購入代金は、経費計上できません。建物と土地、それぞれ1,000万円ずつだったと仮定します。建物は鉄筋コンクリート製とします)。

経費はこのほかに、管理会社への支払い4万8,000円、固定資産税7万円、あわせて83万3,000円です。家賃収入は96万円でしたので、キャッシュ・フローは赤字にもかかわらず、税金計算上の利益はなんと約12万円もの黒字になってしまうのです。

初年度こそ購入時の諸費用などがかかり赤字になるかもしれませんが、その場合でも、年収400万円の給与所得者の所得税率は5%、住民税率は10%、節税効果は両方あわせても赤字額の15%分だけとなります。

<税金計算上の収支>

家賃収入96万円
ローン利息49万5,000円
管理費4万8,000円
固定資産税7万円
減価償却費22万円
不動産投資の利益12万7,000円
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