はじめに
不動産投資の出口戦略
キャッシュ・フローの収支は赤字かトントン、税金計算上の収支は黒字となり税金が発生してしまう、となると踏んだりけったりです。では、このまま不動産投資を続けて30年後に売却した場合はどうなるでしょうか。
不動産投資の利益が毎年12万7,000円出ていましたので、これに税金15%(所得税+住民税)が30年間発生し、約57万円の税金を余分に払うことになります。キャッシュ・フロー収支はトントンという前提でしたので、税金の支払額57万円分だけ損していることになります。
物件は都内駅近という前提ですから、30年後でも土地価格がほとんど下がらず、購入時2,000万円の物件が1,200万円で売却できたとします。30年後の税金計算上の物件価格は1,340万円で、さらに不動産売買の仲介手数料が約45万円かかります。そのため、1,200万円で売れたとしても損失がでるため、税金はかかりません。
キャッシュ・フローはどうでしょうか。ローンの残債403万円を返し、45万円の仲介手数料を差し引いても、手取りは約750万円。今までに支払ってきた税額57万円を差し引いて、30年間で手にしたお金は約700万円。金利変動や修繕、空室リスクなどで手取り金額がもっと減る可能性もあります。やはり投資のひとつですので、ご自身でのリスク管理が重要といえそうです。
経年によるリスクと値上がり期待
不動産投資といえば空室リスクも怖いですが、長期間不動産を保有していると経年に従って家賃の下落リスクがあります。また同様に、約12年ごとに大規模な修繕も必要になるため、資金を用意しておく必要があります。
国土交通省から出ていた「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を元に試算すると、25平米のワンルームマンションの場合、月額の修繕積立金が「25平米×200円=5,000円」、これが30年分となると180万円もの修繕積立金が必要という計算になります。このほかにも退去時のリフォーム代など修繕費が別途発生してくることでしょう。
それでも不動産投資というからには、物件自体の値上がり期待も捨て切れません。特に都心の駅近物件であれば、中古マンション価格の下落率が低いものもありますし、大手デベロッパーのブランド物件などでは新築時よりも中古のほうか価格が上がるという可能性もあります。その場合は30年間も保有しなくても、値上がったときに即売却すれば投資利益を確定させることができます。最近の湾岸タワーマンションでは、新築売り出し時に比べて完成引渡し時に価格が上がっているため、完成後すぐに売りに出される物件もあるようです。
不動産投資は空室がなければ長く定期収入が見込めることから、年金代わりとなる魅力的な投資ともいえます。ローン返済中の投資効率は悪いかもしれませんが、35年経ってローンを完済した後は、修繕費が多額にかかるタイミングを除き、手元に家賃収入のほとんどが残ります。ローン完済後も物件を保有し続けるのか。はたまた値上がりタイミングで売り抜けるのか。そんな選択ができるのも不動産投資の醍醐味といえそうです。