はじめに

波乱要素は中国の農作物購入

ただし、今年に関しては、米中の貿易協議が妥結するかどうかが非常に重要になります。

米国は10月15日から実施する予定だった中国からの輸入品への関税引き上げを延期する条件として、「中国がそれまでの170億ドルの約3倍に当たる500億ドルの米国産農作物を購入する」としていますが、中国側はこれに一切言及していません。

中国の農作物全体の輸入量が1,500億ドル程度であることを考えると、170億ドルの米国産農作物輸入を500億ドルにまで引き上げるのは困難かもしれません。

中国の農産物輸入量

当面はこうした両国の主張の違いは障害とならないかもしれませんが、中長期的には今年5月と同様に、ドナルド・トランプ大統領が「中国の農作物購入が十分でない」として、どこかの時点で関税を引き上げる可能性があります。

これまでの世界の株式市場は、米中貿易交渉に振り回される展開となっています。米中貿易交渉が難航し、関税引き上げが再度実施されるようであれば、経済指標や企業業績のさらなる下押し要因となり、FRBのバランスシート拡大や季節性といったプラス要因を大きく上回る実体経済への悪影響が出てくるリスクには注意が必要です。

<文:ファンドマネージャー 山崎慧>

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