はじめに
「ゆるふわ女医」を支援する「独身バリキャリ女医」
第1回の佐藤教授で紹介したように、大学病院医師の本給は同世代の公務員レベルで、大学医局から紹介されるアルバイト代によって実質的な給料が決まります。また、大学病院の当直料は「一晩1万」レベルで、時給換算すると「コンビニ店員以下」のことも珍しくありません。しかし、医局制度が機能していた時代には「フルタイム医師」と「当直なし女医」で紹介するバイト日数を変えることで、実質的な賃金差を付けることも可能でした。
近年の「女性支援」「子育て支援」ムードによって、子持ち女医の「当直免除」「定時帰宅」は当然の権利となりつつあります。しかし、アルバイト日数で男女差をつけると「ハラスメント」と言われかねない時代でもあります。現状では、「ゆるふわ女医」も「独身バリキャリ女医」も両者の給料に大差はなく、「時給換算するとバリキャリの方が低い」という事態が大学病院で頻発しています。
多くの場合、大学病院「ゆるふわ女医」の夫は医師なので、家庭単位でみると「医師夫婦」を「男性医師×専業主婦夫婦」や「まどか先生のような独身女医」が支援、という「格差拡大」的な構図になっているのです。
ロスジェネ医師と呼ばれて
1998~2003年頃に卒業した医師は「ロスジェネ医師」と呼ばれることがあります。自分が新人~若手だった頃には「白い巨塔」のような丁稚奉公を求められたけど、中堅になるころには時代が変わって「若手や女性を支援する」ことを要求されるという、「最もワリを喰った世代」だからです。
特に、衰退する一方の地方の病院では、「下っ端の雑用」をこなしつつ「中堅としてのハイリスク業務」「定年直前の高齢医師のフォロー」を担わざるを得ない世代でもあります。故郷や母校を見限る中堅医師も少なくありませんが、なまじ責任感があるタイプほど逃げ遅れて、終わりの見えない過重労働に喘いでいます。
それを見た若手医師は(第二回の塩野先生のように東京のマイナー科に)逃げ、さらに人手不足が進行……という負のスパイラルから脱却できずにいます。
婚約はしたものの
かつて、まどか先生には10年以上交際している同級生の恋人がいました。学生時代には代返やノートコピー、医者になってからは夜食作り、炊事、洗濯で甲斐甲斐しく尽くしました。ご両親にも紹介して、事実上の婚約状態だったそうです。しかし、30才を過ぎた頃、当直や産休女医の代診などに忙殺されて会えない日々が続き…やがて、彼氏が神奈川県のC医大に出向中、電話で「C医大の研修医と入籍したので、こっちで就職する」と報告されて…終了しました。