はじめに

優待分も組み入れれば損はしていないけれど…

そうはいっても昔のことすぎて、データが十分には残っていません。そこで仮の数字で計算を試みます。

24万円で買った株を17万7,000円で売れば単純計算では大損ですが、わずかではありますが毎年、配当金も受け取っています。

確か、BSE騒動のときなどは無配の年もあったかもしれませんが、仮に過去30年間、現在と同じ毎年2,000円の配当金がもらえたとします。30年間で6万円。税金が20%取られるとしても、累計で4万8,000円の配当をもらってきたことになります。ただ、それを足してもまだ1万5,000円の赤字です。

しかし、忘れてはいけません。もともと吉野家株を持ち続けた理由は株主優待券がほしかったからです。吉野家の優待券は現在は半年ごとに3,000円分。確か以前はもっと多かった記憶がありますが、とにかくこの優待券を30年間、ずっと受け取ってきています。

細部は思い出せないということで控えめに「毎年6,000円の優待券を30年間受け取ってきた」として計算すると、その価値は18万円分。これで完全に黒字になります。16万5,000円の投資黒字!

いや、ちょっと待ってください。私はプロの経営コンサルタントです。ここでこのコラムを止めてしまうと、ほかのプロのみなさんから総突っ込みを入れられそうです。

それは、「計算方法が違うだろう!」と。

塩漬け株の正しい計算方法は?

実は経済性計算においては時間の価値を組み入れて計算することが正しいとされています。金利を考えなければいけないのです。お金に金利がかかる以上、30年前の24万円は現在の24万円よりもずっと高い。そう考えて計算するのが正しい経済性計算というわけです。

詳細にはプロフェッショナルな手法として、さまざまな計算方法があるのですが、誰でも簡単にできるのがエクセルを使って、IRRという関数で利回り計算をする方法です。

IRR(Internal Rate of Return)とは内部収益率のことですが、計算の結果についてだけ説明すれば、その投資が実質的に年利何%の投資だったのかをエクセルが表してくれるのです。

具体的には、最初の年にマイナス24万円の投資支出があったとします。翌年から毎年配当と優待券合計で(税引き後)7,600円の収入が発生します。そして30年間配当と優待券を受け取り続けた後、株式を手放すと17万7,000円の収入になります(売却損扱いになるのでここは税金はかかりません)。

その数字をエクセルに入れて、IRR関数で利回りを計算するとどうなるでしょうか?

結果は、私の投資成果は年利2.5%だったという計算になります。

配当や優待券の金額などの細部はアバウトなのですが、考え方としてはこれがプロフェッショナル的に正しい投資利回り計算というわけです。

やはり塩漬け株ですから、結果を見ると微妙ですね。損はしていませんし、定期預金に比べれば利回りは高いとはいえ、株式への長期投資のリターンが年利5%いかないというのは投資家の尺度ではいまひとつの成果です。なぜなら10%は狙いたいというのが、リスク投資の本来の姿ですから。

ということで、若かった頃に企てた投資は30年かけて「いい勉強になった」というお話でした。

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