はじめに

寄与分は法律でどう定められている?

ちなみに寄与分は、民法第904条の2第1項に下記のように定められています。

「共同相続人となる者の中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の貢献(寄与)をした者がいる場合、その寄与をした相続人は、遺産分割の際に法定相続分により取得する額を超える額の遺産を取得する権利がある」
これは特別な貢献があった場合、遺産に関する権利が認められているのです。民法には同時に「家族は助けあって暮らすもの」という扶養義務の前提があります。そのため介護はよほどのことがなければ遺産への貢献として認められず、例えば病院への付き添いや日常生活の見守りなどについては、当てはまらない場合が多いのです。

(ちなみに、例えば、子が親の個人事業を手伝って商売を繁盛させ、財産の形成に一役買ったというような場合は、遺産への寄与分が認められる場合も多いと言われています)

なお、介護が扶養義務の範囲を超えて、遺産への寄与分が認められるような要件ですが、明確な基準はありません。一般的な判断として「何カ月にもわたって要介護2以上の親を自宅で自ら介護した」あたりが目安になると言われています。また、親の介護の寄与分が認められる場合、【子の介護がなければ必要になったであろう付添婦の日当額×療養介護日数】が基本となります。

寄与が認められる場合の算定方法

このように寄与分が認められること自体の法律のハードルも低くはないのですが、扶養義務の範囲を超えた特別な貢献として、介護による遺産への寄与分が認められても、通常はさほど大きな権利とはなりません。公的介護保険によって定められたサービスの報酬額が、介護による遺産への寄与分算定の根拠になります。

例えば、所要時間20〜30分の作業(入浴補助など)では、介護報酬は255単位(約2,550円)となります。この金額の70%をかけた概算値=1,785円などの積み重ねが、遺産(の維持)への寄与分として算定されます。

しかし、全額が認められない場合も多く、相続人名義の家に無償で同居していた場合は家賃相当分が差し引かれます。また、あくまでも民法による扶養義務の範囲を超えた分のみが認められるので、それ以上に減額され、大きな差にならない場合が多いです。

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