はじめに

来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックの開催。大勢の外国人観戦客の来日が想定され、五輪開催決定の直後から東京の「ホテル不足」を指摘する声が聞かれるようになりました。

しかし、一般社団法人森記念財団の都市戦略研究所が11月19日に発表した「世界の都市総合力ランキング 2019」によると、上記のような世間一般の認識とは異なる現状が明らかになりました。世界の主要48都市の中で、東京はホテルの客室数が最も多い都市だというのです。

なぜ、客室数が最多であるにもかかわらず、五輪開催時のホテル不足が指摘されているのでしょうか。その理由を深掘りしてみると、東京が都市として再び活性化していくためのヒントが見えてきました。


東京のホテル客室数は15万室でトップ

森記念財団の調査は、世界の主要48都市を対象に、都市の力を総合的に評価する目的で実施されているもので、今回で12回目となります。都市の機能を6つの分野で計70の指標で順位付けしています。

顔ぶれを見ると、トップ10は昨年と変わらず。1位がロンドン、2位がニューヨーク、東京は3位に入りました。

世界の都市総合力ランキング
世界の都市総合力TOP10

今回の調査結果で興味深かったのは、冒頭でも触れたように、都心から10キロメートル圏内にあるホテルの客室数をカウントすると、東京が約15万室で1位だった点です。バンコク、ロンドンの2位グループを引き離した形で、ホテル不足に関する民間のレポートや報道が目につく中にあって、少し意外な結果となりました。

ハイクラスの客室数は低迷

なぜ、五輪開催時にホテルが不足する懸念があるのか。森記念財団の調査結果をさらに読み込むと、ヒントになりそうなものがありました。「ハイクラスホテルの客室数」のデータです。

このデータによると、東京のハイクラスホテル客室数は5,000室強で、全48都市の中では19位に位置しています。1位のバンコクは3万室弱、2位のドバイが2万5,000室、3位の上海も2万室強となっており、東京とはかなりの開きがありました。

ハイクラスホテル客室数
ハイクラスホテルの客室数では19位に低迷

東京五輪が開催される7~8月は海外旅行のハイシーズンで、航空機のチケット代も高くなる時期。さらに五輪の観戦チケットもかなりの高額で設定されています。こうした出費をいとわない外国人旅行者は比較的裕福な層と考えられ、宿泊施設も一定以上のレベルのところを選ぶ傾向にあると考えられます。

そうなると、いくら客室数が世界最多でも、彼らのお眼鏡にかなうホテルは限られてしまいます。このような全客室数に占めるハイクラスの割合の低さが、2020年のホテル不足問題の一因になっているのではないかと考えられます。

[PR]NISAやiDeCoの次は何やる?お金の専門家が教える、今実践すべきマネー対策をご紹介