はじめに

景気減速に打つ手はあるか

次に経済・政策動向については、純輸出の本格回復や大規模な財政出動が期待しづらい中、2020年も景気の減速基調が続くとみています。

中国政府は2010~2020年の10年間で実質GDP(国内総生産)の総額を倍増させるという目標を掲げており、今までの実績から計算すると2020年は5.8%以上成長すれば達成できます。そのため、中国政府はGDP成長率の鈍化をある程度許容しながら、投資・外需主導型から内需主導型への経済構造転換に注力することになるでしょう。

今年、中国政府は大型減税やインフラ投資、国有企業改革など、さまざまな政策を実行に移しましたが、2020年は新興産業の育成や個人消費の拡大、規制緩和、福祉増進などに関する新たな内需振興策が打ち出される可能性があります。

また、金融政策に関しては、国内の消費者物価指数の上昇と米国の予防的な利下げの終了を背景に、インフレと人民元安のリスクが意識され始めたことから、中国の金融緩和の余地は限定的と考えます。中国人民銀行は利下げに対して慎重で、必要に応じて預金準備率の引き下げを実施してくことになりそうです。

2020年の中国株はどう動く?

米中関係と経済・政策動向を総合的に勘案すると、2020年の中国株相場は、実体経済の減速が続く中、大規模な財政出動と金融緩和も期待しづらく、全体的に小動きの展開になると予想しています。

その中で、中国本土市場と香港市場では新興産業の育成や個人消費の拡大に関する新たな政策への注目度が高まり、個別物色の展開になりそうです。

具体的なセクターとしては、半導体の国産化や5G向け電子部品の需要増加で恩恵を受ける半導体・電子部品セクター、国産の新薬開発と福祉増進で成長が期待される医薬品セクター、国民所得の増加と消費の高度化で業績が拡大している消費セクター(小売、食品・飲料、サービス)などが有望とみています。

<文:市場情報部 アジア情報課 王曦>

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