はじめに

「1カ月で〇百万・〇千万稼げます」……。投資や副業などで儲かるノウハウやシステムを教えると称し、高額のお金を要求する情報商材のトラブルがネット上にあふれています。業者はFXや仮想通貨、転売などと手を変え品を変え、甘い言葉で消費者を誘惑してきます。しかしうたい文句ほど儲からないばかりか、多数の被害者を出して集団訴訟が起きたり、詐欺などの悪質な刑事事件に発展したりするケースも少なくありません。

ただ、こういった一見荒唐無稽な儲け話に対しては、「私なら絶対引っかからない」と思う人が実際は大半ではないでしょうか。危険なネット上の情報商材の「引っ掛けるメカニズム」を分析した前編に続き、今回迫るのは「どんな人がどんな心理状態で商材のワナに引っかかるのか」、加えて「引っかからない対策」。情報商材のトラブルに詳しいあまた法律事務所(東京・文京)の豊川祐行代表弁護士に話を聞きました。


「新しいもの好き」は注意

投資やネットワークビジネスの勧誘などで昔から使われる「セミナー」に加え、最近ではWeb動画を始めネットならではの手口で消費者を誘惑する、こうした情報商材ビジネス。“商品”の内容は投資向けの自動売買ツールから転売ノウハウまで様々ですが、「簡単に」「多額の利益が出る」とうたう部分はたいてい共通しているようです。

これまで多くの情報商材絡みの相談を受けてきた豊川弁護士によると、これらの商材の業者が動画の中などで決まって突いてくるのが、視聴者の抱えやすい「社会的不安」だといいます。「依頼してくる人の中には、定年を迎えて『年金生活だけだと収入が下がり、生活がやっていけないのでは』と思い、いっきに手を出してしまったケースがある。年配だったり、終身雇用の終焉を感じたりしている人の将来への不安をあおり、さらに(情報商材で)夢を見せているようだ」(豊川弁護士)。

また、こうした年配層は、新聞記事など活字メディアの記事を信頼する傾向がもともとある点も一因とのこと。「単なる広告に過ぎなかったり、そもそも虚偽だったりする記事がネット上に存在すると思わず、内容を真に受けてしまうのかもしれない」(豊川弁護士)。

ただ、情報商材のトラップに引っかかりやすいのは、ネットリテラシーがあまり高くないとされる高齢層だけではありません。豊川弁護士は「社会的に上り詰めたい、人生で“一発逆転”したいといった欲を持っている人が、これらの(勧誘)動画を見て舞い上がって購入するケースも多い」と分析しています。その中には、いわゆる「意識高い系」な人も入るとか……。

加えて、「新しいもの好き」な人もご注意を。トラブルを多発させている情報商材の中には、FX(外国為替証拠金取引。証拠金を業者に預託し、主に差金決済による通貨売買を行う)にバイナリオプション(オプション取引を元にした金融取引)、仮想通貨を用いたICOなど、近年流行りの投資や副業のネタを取り入れたものが非常に多く含まれます。「情報商材が好きな人には、目新しい副業や投資が好きなタイプが多い。新しい物が出てくるたびに『今度こそ本物』と言われ、騙され続けているのかもしれない」(豊川弁護士)。

情報商材にひっかかる「人のタイプ」だけでなく、豊川弁護士は「引っかかりやすいタイミング」もあるのでは、と指摘しています。「あくまで体感だが、身内が亡くなるなど直近で不幸なことがあったような人が、こういった商材に手を出したケースを目にする。心が弱って判断力が低下しているときに特に引っかかりやすいのかもしれない」。

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