はじめに
コスパ抜群のカラクリ
同社の「100円おせち」は、2015年度に60万個足らずだった販売数が、昨年度は約115万個まで拡大。今年度は1.2倍となる約138万個の販売を見込んでいます。
「100円おせち」の販売推移
5年間で2.3倍の売り上げ規模にまで拡大した一因は、100円という価格にもかかわらず、意外と本格的な味が楽しめるから。実際に先行試食会で商品を口にしてみると、毎年注文している人気のおせち業者の商品と比べて遜色のない仕上がりになっていました。
たとえば伊達巻は、春夏シーズンはしらすやちりめんじゃこを加工している工場に製造を依頼。栗甘露煮は、春夏に贈答用のゼリーを生産している工場に委託しています。いずれもしっかりした技術を持っている工場なので、味は確か。それでいて、シーズンオフなので、生産コストは抑えられるというわけです。
今年度の新商品である豚の旨煮、お煮しめ、海鮮サラダは、1つのメーカーに生産を集約。パッケージを共通化することなどにより、コストダウンにつなげました。
くるみ甘露煮は他の佃煮とパッケージを共通化
また、くるみ甘露煮は、これまでに3種類の佃煮の製造を委託しているメーカーに依頼。サイズを不選別にして工場側の手間を省いたほか、パッケージを他の佃煮とそろえることで低価格を実現したそうです。
食品廃棄問題の解決にも一役?
こうしたコスパの良さ以外に、おせちに対する消費者のニーズの変化も「100円おせち」人気化の背景にありそうです。
前出の楽天市場の調査によると、「毎年のおせちに関して困っていること」という質問に対して、約7割が「余ってしまう」「子供が食べない」と回答しました。また、8割以上が「食べ残しに対する罪悪感を感じる」そうです。
こうした傾向をとらえて、楽天市場では2020年のおせちトレンドの1つとして、自分や家族が好きな食材だけを集めた「“だけ”おせち」を提唱。「肉だけのおせち」など、特定の食材に特化した商品の販売に力を入れています。
楽天市場による今年のおせちトレンド予測
この点で、ローソンストア100の「100円おせち」であれば、食材ごとに小分けで販売されているので、自分や家族が好きなものだけを購入し、独自の「“だけ”おせち」を作ることも可能です。
昨年の場合、12月30日に売り切れてしまう店舗もあったという「100円おせち」。これまでは主婦層の購買が中心でしたが、盛り付け例の提案を始めた昨年辺りからは若い女性も増え始めたそうです。
ローソンストア100の近藤副本部長によると、10月の消費増税の影響を受けて、2020年の正月は節約志向が高まると考えられます。「外食を控えて、家族でおせちを囲む家庭が増えるのではないでしょうか」。消費増税後の節約トレンドを追い風に、計画通りの販売拡大ができるでしょうか。