はじめに
————困っている問題に応じて、窓口があるんですね?
たとえば、適応障害になってしまったというのであれば、労災が絡む可能性があるから労働基準監督署とか、法律の問題が絡んでくるなら法テラスへ。どこに相談していいのかわからない場合は総合窓口への相談でもいいと思います。
————相談窓口はいろいろあるんですね。
職場内にもパワハラ相談窓口だけでなく、コンプライアンス室や労働組合がある企業もあるでしょう。職場内外の相談資源は、確認しておくといいと思います。ハラスメントによって精神的なダメージを受けると、人は合理的に問題解決をするアプローチが取れなくなってしまいます。悩んでいる、被害を受けて悩んでいるときは、間違いなく問題解決能力が落ちています。それを上げるためには、人に相談するしかありません。
――相談するときに注意すべきことはありますか?
職場のハラスメント担当者は、決して、相談を受けるプロではありません。一方で、相談者は話しているうちに気持ちが高ぶって、自分で何を言っているのかわからなくなりがちです。その場で話すと思い出せないこともありますし、事実が伝わりにくい。思いのたけを担当者にぶつけて、肝心なことを伝えずに相談が終了してしまうことが少なくないのです。
それで、気持ちがラクになることもありますが、いちばん伝えなくてはならないことは事実です。事実が正確に伝わるように、相談にいく前にまとめておいたほうがいいでしょうね。いつ、どこで、どんな行為があったのか。紙にまとめて、相手に見せながら話したほうが、正確に伝わります。
――証拠もあったほうがいいですか?
1回目の相談で持参する必要はないかと思いますが、事実に対する証拠があるのであれば、提示したほうがいい。音声データなどは自分の身を守るための常套手段ですし、現実問題として、上司との面談の際に録音する人はいます。ただ、「パワハラ未満」の状態で、上司と話をするたびに録音をするというのは行き過ぎだと思いますし、根本的な解決にはつながらないでしょうね。
――上司との関係はますます悪くなりますね。
録音する部下に対し、憤る管理職もいます。でも、録音の是非を問うのも、問題の本質ではないんですね。管理職セミナーでは、「録音しなければならないほど、あなたとの面談は危険だと感じている。その事実を理解すべきだ」とお話します。明らかに関係性が悪いわけで、そこを変えていくことをまず考えるべきだ、と。
――それはそうですよね。
本来、上司は個人的な感情を部下にぶつけることはしないはずですし、上司としてあるべき態度をとり、部下との関係を作っていけばいい。録音されたら困るというのは、かなり危ないことをやっているということ。「こいつ、録音してるんじゃないか?」と疑いながら、まともなマネジメントはできません。