はじめに

パワハラの相談を受けたら?

――個人的にパワハラ被害を相談されたら、どうしたらいいですか?

パワハラ相談の担当者の対応にも通じるのですが、まずは、丁寧に話を聞いてあげて、つらい思いを受け止めてあげる。そのうえで、具体的な話を聞き取っていきます。 

相談のプロであるカウンセラーも、話を分解して聞き出していきます。いま、語られているのは、事実なのか、意見なのか、要望なのか、気持ちなのか。気持ちに対しては「大変だったね」と寄り添い、被害を受けたときと今の気持ちの変化を聞き出す。その人の体調面での変化やストレス反応の状態を探るんです。

前回、パワハラは「職場の多様な問題の集合体」であり、「極めて抽象的な言葉」だとお話ししました。その抽象的なものを、具体化していくわけです。

和田隆さん

――たとえば、どんなふうに?

いつ、どこで誰が、何を、なぜ、どのように行ったのかを確認しながら、たとえば、「指示されたことがうまくできず罵倒された」という事実があったとき、細かく聞き取ることで、じつは上司の指示が曖昧だったということがわかってくる。すると、マネジメントに問題がある、と原因までたどりつくことができます。

また、「サービス残業を強いられる」というのであれば、労務の問題ですよね。問題を明らかにしていくことで、対処法を探るわけです。

ただ、ここでも大切なのは相談者の納得感です。気持ちが楽になりたいというのであれば、話を丁寧に聞いてあげることでスッキリすることもあります。できることがあったら、サポートしてあげる。決して、自分の「正しさ」を押しつけないことが重要です。

――正しさを押しつけないとは?

前回も言いましたが、パワハラは感情の問題です。感情の問題に「正しさ」を持ち出すといいことはひとつもありません。パワハラをする上司を考えてみてください。部下を叱責するのは、「仕事なんだから、責任感を持つべき!」「結果を出すべき!」という思いがある。仕事に責任感を持つ、結果を出すというのは、「正しい」ことでもありますよね。でも、その正しさがパワハラの原因になっている。そこでまた、正しさを持ち出してもダメ。なにより大切なのは、相手の感情を理解することなんです。

――なにかと、「正しさ」が持ち出されがちですが、正しいことが正しくないこともある、と。

繰り返しになりますが、職場で起こっている「パワハラ」とされることの多くはコミュニケーションやマネジメントの問題で、「パワハラ未満」と言えるものです。これらは、上司と部下という関係の中で起こる感情。問題解決は、その関係性をどう変えていくのかです。人と人との関係性は変えることができるものです。

正しいか、正しくないか。白か黒か。パワハラかどうかの境界線ばかり気にして「パワハラ禁止!」と叫ぶよりも、「働きやすい職場」「良好な人間関係づくり」という前向きなアプローチのほうが、パワハラを生まない職場づくりの近道になると思いますよ。

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