はじめに
ドルコスト平均法の是非
日本株と比べて力強い印象の米国株市場ですが、投資対象としてはどのように向き合っていけば良いでしょうか。分散の観点からは、ポートフォリオの中に組み込む価値は十分にあると考えられます。
米国株投資の導入としては、ETF(上場投資信託)などの投資信託を積み立てるのが無難かと思います。一方で、純粋な毎月積み立て投資には落とし穴があるかもしれません。
積み立ての方法で一般的なものとして「ドルコスト平均法」があります。これは、毎月一定の金額を購入することで高い時は少なくしか買えないものの、安くなったらたくさん買えるという仕組みで、時間分散の効果も発揮できる手法です。
しかし、これらの弱点として、相場が上げ局面の場合は不利になってしまう点があります。米国株の場合、基本的に上昇トレンドを維持し続けているため、ドルコスト平均法を利用した場合、平均取得価格が上がり続けてしまい、メリットを享受しにくい展開も考えられます。
あくまで結果論でありますが、ボーナスでの積み立てを利用して、ある期間では多めに積み立てる、あるいは順張り時に効果を発揮する当口数投資を組み合わせるなどして、柔軟に積み立てることで、より効率的に資産を増やすことができるのではないでしょうか。
米国株の好調はどこまで続く?
過去最高の水準を保ち続ける米国株式市場は、今年も成長を続けるのでしょうか。足元のNYダウのPERは18倍である一方、2020年の1株当たり利益の成長率は5%ほどと見込まれているため、割高な状態を維持できるかが焦点になります。
有力企業に目を向けると、米国市場で最大の時価総額を誇るアップルの目標株価を現在よりも20%ほど高く設定するアナリストもいるなど、まだまだ成長期待は続きます。日本株でも、TDKや村田製作所といった「アップル関連」と呼ばれる関連企業が多数存在します。この1年間での株価も堅調なものが多く、引き続き期待が持てます。
一方で、競争が激化しているセクターも出てきています。クラウド市場では、約40%と圧倒的シェアを誇るAWSを展開するアマゾンに対し、追いかけるマイクロソフトが100億ドル規模のクラウドサービスの契約を米国防省と結ぶなど、対抗しています。
ほかにも、動画配信ではネットフリックスと動画配信を開始したディズニー、ECではアマゾンとウォルマートなど対立構造が明確になっており、シェアの取り合いにより業績が減速していく可能性があります。
世界的な金融緩和により世界経済の後退懸念に一定の落ち着きが見られたところで、中国の新型肺炎の流行と景気減速への火種がなおくすぶっているマーケット。過度な楽観視は禁物かもしれません。
<文:Finatextホールディングス アナリスト 菅原良介>