近年、企業の不祥事を耳にする機会が増えました。不正会計、労務管理の問題、情報漏洩や検査偽装など、あらゆる分野で事件が発生しています。

昔と比べて労働時間の管理や、顧客情報の管理が厳しくなった昨今では、法令に抵触しないように不正が発生しやすくなっているのかもしれません。

とはいえ、検査偽装など昔から行われていたことが、今になって明らかになるケースも少なくありません。これは、昔と比べて内部告発が行いやすくなったからです。日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の失脚も、内部告発が引き金となりました。

その背後には、「内部告発の保護」に関して政策(ポリシー)を定め、実践する企業が増えたことがあります。今回は、内部告発保護ポリシーと株価の関係を調べてみます。


東証1部企業の8割が導入済み

東証1部の上場企業で、2019年末時点でCSR報告書などを通じて「社内倫理に関する苦情の報告に対し、報復または懲罰なしの制度を設定して公表している企業」の割合は80%に上ります。

倫理に反する行為を正すことは従業員、株主、債権者や顧客のためなので、企業にとってポリシーを定めることには大きなメリットがあります。とはいえ、会社の問題が世の中の明るみに出るわけです。企業の信用が低下して業績も悪化し、株価が下落する懸念が生まれます。したがって、こうしたポリシーを自主的に定めることは簡単ではありません。

それでも、これだけ多くの企業が内部告発保護ポリシーを持つようになった背景には、2006年にスタートした「公益通報者保護法」があります。この法律は消費者庁のウェブサイトで詳細を確認できますが、平たく言えば、内部告発者を保護するため、企業側からの解雇など不利益な取り扱いを無効とするものです。

内部告発というと、いきなりマスコミにリークしたり、ネットで訴えたりといったものを想像する方もいるかもしれません。しかし、この法律では「事業者内部」「監督官庁や警察・検察などの取り締まり当局」「マスコミ・消費者団体など」への通報が対象となっています。

ポリシーの有無は株価に影響なし

このうち「事業者内部」への通報については、企業の中での自浄努力を期待するものです。たとえば、上司から長時間労働を強いられたなどの事象があると、それを企業倫理(コンプライアンス)部門に直接連絡できるような窓口(企業倫理ホットライン)を作るケースが増えています。

企業倫理違反を社内で比較的スムーズに通報できるようなシステム(企業倫理ホットライン)がないと、企業側で自浄する機会がなく、むしろマスコミにリークされやすくなり、企業の信用力低下のリスクが高まってしまうからです。

こう考えると、内部告発保護ポリシーを持ち、それを公表している企業の株価は、そうでない企業と比べて、良好なパフォーマンスが期待できそうです。ポイントは、問題に関して自浄努力の姿勢が強いということが期待される点にあります。

ところが実際に検証してみると、内部告発保護ポリシーを持ち、それを公表している企業の株価が良いという明確な傾向がみられませんでした。東証1部でいえば8割にも上る企業がすでに公表しているため、上場企業としてはむしろ“一般的なこと”だから、かもしれません。

だからといって、この情報が株価と関係がないというわけではありません。次のような分析をしてみました。