はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する内藤忍氏がお答えします。
20代でベンチャー企業を経営しています。以前、内藤さんのインタビューで「お金を手にしても変わらなかった人・お金を手にして変わってしまった人」の話を読み、とても印象に残りました。自分の会社はまだまだですが、事業が成功した暁にはしっかりとしたお金が手に入る可能性もあります。
まさに“取らぬ狸”ですが、例えば、ある日数億円のキャッシュが手に入ったとき、とりあえずの使い道が決まるまでの間は、どうすればよいのでしょうか? さまざまな富裕層の方と出会ってきた経験からお知恵を拝借できるとうれしいです。
(20代後半 独身 男性)
内藤: 20代でベンチャー経営、大きな夢があってよいですね。確かにベンチャー企業の経営に成功すれば、IPOや企業売却によって大きな資金を手にすることができるかもしれません。
しかし、お金との付き合い方で大切なのはせっかく手に入れた大切な資金を、その後の人生にどのように使っていくのかだと思います。
狙うべきは「ニワトリの卵」
お金の使い道は人それぞれですが、資産を増やし必要なお金を手に入れて守るという観点からすれば、資産運用の方法をしっかり立てておくことが必要です。
資産運用においては、リスクを取ってリターンを狙うことになりますが、リターンには大きく分けるとキャピタルゲインとインカムゲインがあります。前者は株式投資などで値上がりによって利益を得る方法、後者は債券投資や不動産投資によって金利や賃料などの定期的な収入を得る方法です。
もし起業に成功すれば、自分の会社への投資によってキャピタルゲインから大きなリターンを得ることになります。もし必要な金額を手にしたのであれば、その資金からさらにキャピタルゲインを狙うのではなく、インカムゲインを狙う資産運用を行い、安定したキャッシュフローを狙うことがよいと思います。
例えて言うと、「ヒヨコを購入してニワトリに育てていく方法」から、「ニワトリを購入して毎日産んでくれる卵から収益をもらう方法」にシフトしていくということです。
数億円の現金を投資に回して、あっという間に半分以下まで減らしてしまった人は私の周りにもたくさんいます。彼らはキャピタルゲインによって、本来必要のない資産を手に入れようとし、結局減らしてしまったのです。
インカムゲイン投資であっても元本が減ってしまうことはありますが、定期的に入ってくる収入の範囲で支出をコントロールすれば、「卵を産むニワトリ」をずっと手元に置いておくことができます。
今は「不動産投資」に注目
具体的なインカムゲインを狙う投資対象として、世界的に金利が低下し債券運用で大きな金利収入が得られない現状では、不動産に注目しています。
国内の不動産であれば、都心の居住用物件で5~6%、海外の不動産になればそれ以上のリターンを期待することができます。さらに物件価格が上昇すれば、キャピタルゲインを得られる可能性もあるのです。
不動産投資は実物資産ですので、個別の物件の視察が必要になります。つまり、物件を見つけるまでに時間がかかるということです。
使い道がないお金は持っていても意味がありませんが、使い道が見つかるまでの間、このようなインカムゲインを目的とする不動産に資金を置いておくことは、有力な選択肢のひとつになると思います。
まだ、将来の話ですので、具体的な投資案件まで検討する必要はありませんが、お金の置き場所に関する大まかなイメージは今のうちから持っておいたほうがよいでしょう。
きちんと準備をして、お金に翻弄されない人生を実現してください。