はじめに

アニメのリピーターが増えただけ?

あるシネコン運営会社の関係者によると、映画館へ出向く人にはリピーターが多いといいます。実際、調査などでは、映画館のリピーター比率が7割を超えています。

昨年の興収ランキングを見ると、1位の「天気の子」を始め、「アナと雪の女王2」「名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)」など、上位にはアニメ作品が多く名を連ねています。通常、「アニメ愛好者にはリピーターが多い」といわれており、映画ファンの裾野が広がっていない可能性も否定はできません。

興行収入

むろん、映画業界も手をこまぬいているわけではありません。ペンライトを振ったり、歓声を上げたりすることが許される「応援上映」や、音楽ライブ用のセットを導入し、大音響の中で映画を楽しむことが可能な「爆音上映」など、映画館での映画鑑賞の楽しみ方が増えてきました。

映画館で楽しむことができるのは映画だけでありません。コンサート会場などに足を運ばなくても、臨場感を味わうことのできるライブビューイングは、新たな映画館の活用法の1つです。

半数近くの若者が「値段が高い」

筆者の大学のゼミ学生が主として10~20代の男女200人余りを対象に実施したアンケート調査で、映画館へ行かない理由を聞いたところ、「値段が高い」との答えが全体の約44%を占め、1位となりました。

映連の調べによれば、2019年の入場者1人当たりの平均料金は1,340円。これに対して、一定の額を払えば好きな動画が見放題といったサブスクリプションによる動画配信のサービスには、「新作配信のタイミングこそ映画館での上映よりも遅いとはいえ、おトク感が強い」との受け止め方もあります。

他国との比較でも、日本の映画鑑賞料金は高いのが現状です。「ネーション・マスター」というサイトによると、日本の料金は2014年時点で17.67ドルと174ヵ国のうち、5番目の高さ。ハリウッドのおひざ元、米国は10ドルで43位です。

最近の映画館が快適なのも事実です。シートはゆったりとしているうえ、前後の座席の間隔も広々としています。こうした設備投資への負担や足元の人件費の上昇などを踏まえると、値下げが簡単ではない面もあるでしょう。

「映画館の入場者数をさらに増やすには、若者の間に映画文化を根付かせる必要がある」(ベテランの映画監督)。映画業界の試行錯誤が続きます。

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