はじめに
学校改築だけで30億〜40億円
2019年度に流出した約54億円だけでも、園庭つき保育園18園分の整備費に相当。学校改築には1校分で30億〜40億円、道路の維持管理に年間で40億円かかるといいます。
また、2023年以降に高齢化がさらに進むことから、福祉などにかかる経費が400億円以上増額すると見込んでいます。
高齢者施設に関しては、現状では直接的に影響は出ていませんが、区の一般財源が落ち込むと、社会福祉法人の特別養護老人ホームの施設整備助成の限度額に影響が出かねないといいます。
また、人件費の高い都内では、介護人材を呼び込むために何らかの方策を取る必要があります。減収が続くと、そうした際に「選択の幅が狭まってしまう可能性がある」と、担当者は危惧しています。
地元愛に訴える「ふるセタ」
保坂区長は「世田谷区としては、強力に国に対し、ふるさと納税制度はもう崩壊している、直ちにやめるべきだ、見直せということを言っていきたいと思います」と、ふるさと納税制度の見直しを求めていますが、他にどのような手を打っているのでしょうか。
世田谷区は2019年10月、返礼品が中心となったふるさと納税制度に対し、「心のふるさとは、今いるココ」「ふるさと納税は、我らがせたがやへ。」と、地元愛に訴えるキャンペーン「ふるセタ」を開始しました。
タレントの松尾貴史さんをはじめとする区民が「ふるさと世田谷」を語る動画をウェブ上に公開し、地元愛を語るムーブメントを目指した内容です。
ほかにも、クラウドファンディング形式の寄付を開始しています。教育、介護福祉、奨学金など、寄付者の興味のあるテーマから使い道を選べる内容。そのうちの1つは「医療的ケア児」のファミリーをキャンプなどの外出イベントに招待する事業で、公的サービスで実現するのは難しい領域で、困っている人を支援する取り組みです。
2020年度は「ふるセタ」で伝えてきた内容を継続しつつも、「区政の税収が大きく減少していて、将来的にはみなさんのお子さんの生活にも影響する」といったメッセージをより強く打ち出していく予定としています。
返礼品の拡充を進める川崎市と異なり、区民の地元愛に訴えかける道を選んだ世田谷区。住民税の流出を食い止めることができるでしょうか。