はじめに

働けないリスクに備える「就業不能保険」

公的保障で足りない分をカバーする方法としては、民間の保険会社が販売する「就業不能保険(または所得補償保険)」があります。日本では比較的新しい保険なので知らない人も多いでしょうが、アメリカやドイツでは広く普及している保険です。名称が似ていますが、死亡や高度障害時に保険金が受け取れる「収入保障保険」とは違うものです。

就業不能保険の保障内容は保険会社によって異なりますが、保険会社が指定する就業不能状態になったとき、契約時に指定した年齢までお給料のように毎月一定の給付金額を受け取れるものが一般的です。

就業不能保険は長期間の就業不能に備える保険であるため、基本的には「支払対象外期間」があります。60日や1年6カ月と設定されている商品もあれば、4日などの短期間に設定されている商品もあります。

保険料を抑えながら就業不能保険を選ぶためのポイント

就業不能保険は自分の状況に合ったものを選ぶことが大切です。保障が手厚いほど保険料も高くなりやすいので、家計とのバランスも見ながら複数の商品を比較して選びましょう。

(1)給付金の支払い条件は自分の希望と合ったものを
商品によって給付金の支給条件が異なるため、給付金の支払い条件が自分の希望と合っているかをよく確認することが大切です。主な基準は、「医師の診断(就業不能状態が終わると給付金の支払いも終わる)」「身体障害者手帳の交付」「障害年金の認定」「要介護の認定」「特定の疾病を発症」などです。また、精神疾患は保障対象外となる商品も多いので、よく確認しておきましょう。

(2)保険期間は退職するまでがキホン
保険期間は60歳~70歳満了に設定し、働く期間すべてをカバーするのがおすすめです。ただし、収入が減少しても家族内でやりくりできそうな共働き夫婦などは、住宅ローンの支払いや子育てが終わる時期に合わせて50歳~60歳満了にしても良いでしょう。

(3)保障金額は必要最低限の不足額にしよう
保障金額は、現在の収入金額と自分が受け取れる公的保障の差額が目安となります。働けなくなったときに減らせる支出(家賃やレジャー費など)や増やせる収入(配偶者が働くなど)があれば、それらを考慮して保障金額を決めると保険料が抑えやすいです。

(4)健康体なら死亡保障の特約で備えるのも有効
就業不能保障は、収入保障保険などの死亡保険の特約で備えることもできます。収入保障保険は非喫煙者や健康体の人は割引価格となる商品が多いので、合わせて加入することで保険料が抑えやすくなります。

「貯金」や「副業」も立派なリスク対策になる

就業不能保険は保障条件が限られるうえに免責期間もあるので、決して万能とはいえません。そのため、ちょっとした病気やケガには「貯金で備える」という意識を持つことも大切です。貯金は災害や失業などのあらゆる万一に役立つので、必ず備えておきたいものです。

また、「副業」を持つこともリスク対策になります。副業があれば収入の減り方が抑えやすいですし、転職や再就職のときに役立つこともあります。

公的保障や民間保険、貯金や副業などをうまく組み合わせて、働けないリスクに備えておきましょう。

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