はじめに
株価が反発するための条件
では、経済や株価が好転するためには、どのような要素が必要となるでしょうか。当然、最も大切なのは、コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかることです。また、有効な治療薬が開発され、実用化されるフェーズまでいけば、マーケットは一気に強気に転じるでしょう。
そして、経済的ショックを少しでも和らげるために世界各国が協調的に大規模な財政出動や金融緩和を実施することも、マーケットを安心させるうえで必要となります。
財政面で、米国はいち早く行動しています。ドナルド・トランプ大統領は13日に国家非常事態を宣言し、最大500億ドル(5兆4,000億円)を新型コロナウイルスの感染拡大のために利用することを表明しました。
日本でも、15日に西村康稔・経済再生担当相が「経済への影響はリーマン・ショック並みか、それ以上」と発言するなど、政府としても大きな危機感を持っていることがわかります。今後おそらく10兆円以上の大規模な経済対策が議論されることになるのではないでしょうか。
金融面でも、米国を先頭に各国が金融緩和を急いでいます。FRB(米連邦準備制度理事会)は臨時でFOMC(連邦公開市場委員会)を開催し、3月3日に政策金利を0.5%緊急で引き下げました。ECB(欧州中央銀行)やイングランド銀行も債券購入金額の増額や利下げなどの金融緩和策の実施を表明しました。
さらに日本時間16日の早朝、FRBは政策金利を事実上ゼロ金利にし、量的金融緩和の再開を発表しました。日本銀行も金融政策決定会合の実施日を早めて、追加金融緩和を発表しました。
個人投資家がとるべき策は?
世界的に株価は大きく下落しましたが、コロナウイルスの感染拡大や治療薬の開発がいつ実現するのかわからない以上、現時点で大きなリスクを取ることは避けたほうが無難でしょう。守備の意識を引き上げ、現金保有比率を高めにして、マーケットから振り落とされないよう冷静に対応することが有効と考えます。
日本株を購入するとしても、経済が大きく落ち込む中でも業績を伸ばしていけそうな銘柄がマーケット全体の調整に巻き込まれて大きく下落した時に少額ずつ仕込み、リスクを取りすぎないことが有効でしょう。
コロナウイルス問題が落ち着けば、各国の金融緩和や財政出動であふれたマネーがリスク資産に向かい、大きく上昇するフェーズが来ると考えています。いつ株価が底打ちするのかは誰にもわかりませんが、リーマン・ショックも東日本大震災もチャイナ・ショックも長い目で振り返ってみれば投資の好機でした。
市場は恐怖に支配されていますが、「明けない夜はない」という言葉を胸に、悲観しすぎず冷静にマーケットに向き合いたいところです。
<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>